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谷村志穂「みにくいあひる」

タイトルが示唆するように、不機嫌な女のひとたち。のがれられなくて恋に愛にのめりこんでいって、仕事と私生活が正反対だったり引きずられていったり、不倫が多く描かれていましたが、わかっているのにやめられないもどかしさがあふれていました。

奥田英朗「ララピポ」

滑稽さはあると思っていたものの意外に苦い部分もあって、可笑しみを感じつつじわじわと浸透してくる黒さもありました。映画化に当たって登場人物の一人である女の子を森三中の村上さんが演じるらしいのですが、そのイメージがぴったり。痩せてきている今だ…

長谷川安宅「ミツメテイタイ」

なるほど、と思っていたら第二部から急展開、旅に出て結局そうなってしまうのか、と残念な気持ちにもなりましたが、主人公の内面の表現が今時っぽくもあって微笑ましく、自分と他人とで評価が違っているところがさりげなく描かれているところも興味深かった…

三崎亜紀「鼓笛隊の襲来」

こういう世界だった、と他にまぎれていたとしても見つけ出せる色があって、多くを語らず示唆するだけで、でも投げっぱなしで解釈させるというような印象はありませんでした。

吉田修一「ひなた」

四つの季節と四つの視点、それぞれの事情が交錯しあっているのにドロドロとしすぎていないので気持ちがもたれることはなく、ちょっと軽いかなという気もしましたが、さらっと終えることができました。

松尾スズキ「サビシーマン」

身を削るってこういうことなのか……と思いながらもつい笑みを浮かべてしまいながら、情けなさのある人間くささをしみじみと味わいました。

「Lost and Found―さがしもの (teens’best selections 16) 」

思春期ものでオムニバス、今回もキラキラとした世界をさらっと読めて、ちょっとしたつながりにニヤリとしてしまいました。

森川楓子「林檎と蛇のゲーム」

読みやすいとはいえミステリに分類されるので、ひたすら初心者の私はひょえー、こうなるのかー、と展開がさっぱり読めずに驚いてばかりでした。けれど謎解きより人との関係性に重点が置かれていたので、さくさく進んでいく話にもついていくことができました。

永江朗「ブックショップワンダーランド」

個性的なお店の書店員さんたちにお薦めの作品を紹介してもらう、という内容でいくつもいくつも読みたい作品が出てきました。今まで読んでこなかったジャンルのものでも、こういう感じですよと親切に紹介してくれるので興味を持ちやすかったです。ただちょっ…

橋本紡「九つの、物語」

ファンタジー要素もありつつライトでもありつつ、それぞれの章に文芸作品が冠されていて内容にも触れられているので、中学生ぐらいの子が読んだら興味を持つようになっていました。ちょっと不思議でもそこだけに重点があるわけではなく、人と人との関係性に…

山崎ナオコーラ「長い終わりが始まる」

今回もどことなく不機嫌な感じの女の子が主人公で、静かないらだちがなぜだか気持ちよくもありました。どうにもならないやるせなさや結論の出ない展開など、読んでいる側がやきもきしてしまうのかもしれませんが、私自体はそんなに翻弄されることはなく、が…

小池昌代「裁縫師」

カサカサとかわいているようにも思えるのになまめかしい、不思議な魅力がある小池さんの世界。乾燥している分みずみずしさが目立つのかもしれません。表題作も明確な表現はないのにひそやかで妖しい空気がただよってきて、その風景が目に浮かぶようでした。

小手毬るい「欲しいのは、あなただけ」

嵐のように揺さぶられても芯を曲げなかった女の人は過去の恋愛をいとおしそうに振り返る。相反する二つの気持ちがあって、それをうまくコントロールできない様などとてもリアルでした。

小川勝己「純情期」

きれいすぎない青春もので、少年の正直なところや女の先生の悩む姿が微笑ましかったです。

高野裕美子「あの日の桜吹雪よりも」

ミステリものという紹介がされていましたが、身構える必要もないくらいさらさらと読めました。簡単に言ってしまえば結構ベタな恋愛ものですが、主人公に共感する人と浅いと切ってしてしまう人とに分かれそうでした。

西加奈子「こうふく あかの」

西さんの描く物語はところどころに男くささがにじんでいるようで、この作品も猪木が出てきたりしたのでむふふとなってしまいました。地続きになっていてもみどり編とは違った世界で、なんだかんだ言いつつ結局人間の体温に安心するような、やさしい場所でし…

井上荒野「夜を着る」

旅にまつわる短編集ということですが、旅行ではなく旅、と言うところがポイントなのかもしれません。日常の中にするすると入り込んで来た旅の違和感、恋愛要素が絡んでくるのでよりいっそうその意味合いが濃くなってきて、息苦しくなりながらも濃密な世界に…

河合隼雄「人の心がつくりだすもの」

さまざまな分野で活躍している方との対談を取り上げたものなのですが、どんな感じであっても自分に引き寄せていく河合さんのすごさがよくわかりました。色々とメモしておきたいことはあったのですが、印象的だったのは森村泰昌さんの発言。 よく、「アートを…

松尾由美「フリッツと満月の夜」

さらっと読める、ちょっとしたミステリーやファンタジーが混じった爽快感のある話でした。謎解きものに関して疎いため、読み進めて解明しないとどういうことなのか全然わかりませんでした。

オムニバス「Twinkle―ひかりもの (teens’ best selections 17) 」

児童書に強いポプラ社から出ている、シリーズ名通り十代に親しみやすいオムニバス。「Fragile―こわれもの」に続いて二作目で、こちらはいくつかの縛りがありつつ、きらきらとしたものを描いていました。そのうちの一つに関西のどこかの町が舞台ということだ…

桜庭一樹「荒野」

女になる前の女の子のおはなし。とても読みやすく、ゆらゆらと揺れる心情と行動が目に浮かぶようでした。ちょっときれいすぎて軽いかなという気もしたのですが、テンポ良く進んでいくので斜めに見てしまわずに済みました。

オムニバス「本当のうそ」

やさしかったりにがかったり白かったり黒かったりする、それぞれの嘘のものがたりは世界の濃さも違っていて、気持ちをくるくると変えながら楽しみました。

長塚圭史「COFFEE SHOP〈2〉―長塚圭史対談集」

1を読んでいないもののラインナップにそそられて。魅力的な俳優さんとの対談で、作品を作り出す人、演じる人だからこその視点もあったため未見の作品にも興味が出てきました。長塚さんのことを好きな人は結構いて、あの舞台も良かったよーすごかったよーとい…

さとうさくら「メルヘンクラブ」

豊島さんとはちょっと違ったタイプの駄目女子を描くさとうさん。今回も駄目女子を痛々しさ満載で彩っていて、彼女だけではなくその周囲の人々もかわいた滑稽な目線で登場させていました。豊島さんの方は痛々しかったり苦かったりしてもどこかにきらめきがあ…

中原昌也「ニートピア2010」

個人的な好みからは少しずれてはいるのですが、やっぱり中原さんの愛嬌にやられてしまいました。ストーリー重視の人からすると全くもって論外なのかもしれませんが、一つ一つの物語の中で日本語を使って遊んでいて、見た目も含めて味わいがいがあるものにな…

磯崎憲一郎「眼と太陽」

きれいなものがするするとすり抜けていく。

川上弘美「真鶴」

他の作品で感じることはなかったので、この中でのみ通用する世界なのかもしれませんが、なんとなく石田千さんの描く文章に濃さが似ている印象を受けました。綿密に、じっとりと、においたつものがある色気。

黒井千次「老いの時間の密度」

次は打って変わって、始まりから終わりへ向かう、味の染み込んだ文章。ユーモアもたっぷりでハッとさせられるところも多く、面白く読むことができました。今の自分にはまだ見つけられないものだったり感じられないことがたくさん描かれているので、黒井さん…

篠田真由美「魔女の死んだ家」

無理だとわかっていても全巻制覇したくなるミステリーランド、まだまだ六冊目。挿絵が少女ものっぽいですが初心者にやさしいミステリーの要素はきっちり含まれていたので、時間や視点の入れ替えを味わいつつネタバレに、初歩の初歩かもしれませんがおおーと…

「恋のかけら」

にがかったりしょっぱかったり切なかったりする恋のお話のオムニバスだったのですが、気になる作家さんたちをそれぞれ楽しみながら、またしても豊島さんにはそうくるのか、と思わされてしまいました。