暗い青春/魔の退屈 (角川文庫 緑 100-1)

暗い青春/魔の退屈 (角川文庫 緑 100-1)

「さ」
「白痴」など有名作品を読みたかったのですが家にずっと眠ったままだったりするので、青春ものを読み漁りたい年頃な上にタイトルに「暗い」ときたのでこちらを借りました。私小説的な、連作の要素がある一人称語りもの。松子との共通点を見出しそうになりました。
解説によると安吾さんは私小説的な作品はほとんどない、とのことで他の作品はまた違った味のようなのですが、今のところ私の中では駄目男というレッテルが貼られてしまっています。男の人の情けさっぷりといったらかなりのもので、色々と難しい単語を並べ立てたり御託をいくつもごろごろと転がしてはいるのですが、言っていることはとてもシンプルで陳腐で、でも憎めないのが彼のキャラクターなのでしょうか。今で言う「だめんず」なのかもしれません。ある思いにとらわれてしまったり、死について考えたりするけれど周囲の人々の方が先に逝って自分はしぶとく生き残っていたり、不貞にもほどがあるほど遊びまくったのに、ずっと好きな女の人とは結局体の関係はないままで、彼女にも先立たれてしまったり、投げやりな生活が目に浮かぶようでした。そしてこの作品を読んでいるときに耳からはシロップが流れていて、テーマソングとして似合いすぎていて吹き出しそうになってしまいました。