火星の魔術師 (探偵クラブ)

火星の魔術師 (探偵クラブ)

「ら」
いくつか作品が収録されていて、後ろにいくほど科学的な要素が強くなっていくのですが、一番最初の「夢鬼」という作品は、そういうのが好きな人にとってはたまらないだろうなあと思えるものでした。鬱屈した少年、コンプレックスと少女とのおかしな関係、直接的な描写は無いのに漂う肉感的な色気、肉体の一部を失くすということ、その後のもっと鬱屈した日々と倒錯に飲み込まれていく様子はぐいぐいとひきこむ力を持っていました。解説で述べられていたように、ものや女性の一部への偏愛、いわゆるフェティッシュファンタジーという表現がぴったりでした。その後のものでもどこか少し狂っていたり、自身が病にかかっていたせいかサナトリウムの描写もそのシーンがよみがえってくるかのようで、他の作品も読んでみたくなりました。ただ彼の作品はたくさんあっても本となっているものは少ないようなので、これから復刻でもされたら良いのにな、と願うしかありません。