『九月に降る風』*3

サービスデーなので他の作品も見たかったのですが、上映に間に合いそうだったためダッシュしてユーロスペースまで。思春期もの×群像劇とあって、その組み合わせだけでも好みに違いないのに、描き方も私好みのものだったのでたいへん満足でした。タイトルも印象的!


出てくるゲームがサターンだったり、通信手段が家電やポケベルだったりして、台湾だからなのかなと途中まで思っていたのですが、よく考えてみれば90年代のことだと最初に説明していたので当たり前でした。96年のこと、つまり私も思春期まっただなか、国は違えど共有する感覚が多くありました。
仲の良い男の子たちの関係が丁寧に描かれていて、誰が誰なのか名前は最後まで把握しきれませんでしたが、それぞれにキャラが立っていて、お互いどう思っているのかというのも態度でよくわかるようになっていました。わかる、けれど明確ではなく示唆するところが好みに合っていて、昔の日本映画を見ているような感覚がありました。使われている音楽がロックなど、格好良さげなものではなかったのも一因だったかもしれませんが、お洒落映画としてではなく真っ向から勝負している潔さも感じられて好きでした。とは言いながら、『青い春』が好きな方にはおすすめしたい作品です。
仲良したちも同じクラスや同じ学年や同じ部活というわけではなく、学年がバラバラでつるんでいるというのも興味深く、パシリのような存在がいなかったのも印象的でした。お互いに助け合って依存し合っている、大胆でも繊細でもあるあの頃の感覚を思い出しました。密度の濃い関係性をじっくりと見せているので、バラバラになっていくところも重く感じられるようになっていて、何より、もう二度と同じように集まるようなことがないのだなとほのめかしているところが切なくも良かったです。
ラストに関してはずるい、あれはずるいです。ご都合主義と言われるかもしれませんが、ずるいずるいと言いながら好きな終わり方でした。台湾映画ながら日本の感覚にとても近く、俳優さんに対する知識もないのですっと入り込むことが出来て、共有できることがうれしかったです。

ちなみに男の子ばかりの中、出てくる女の子は二人いるのですが、そのうちの一人がハリセンボンのはるかさんに似ていて、つい気になってしまいました。