あさのあつこ「ありふれた風景画」

ありふれた風景画
あさのさんの描くきりっとした女の子を見るといつも思い出す女の子がいます。自分のことを「あたし」と言う後輩キャラの彼女は基本敬語なので、時々タメ口が出るとドキッとします。そんな彼女のことを思い出しつつ、ジャンルとしてはいわゆる百合ものとくくられてしまうものなのかもしれませんが、思春期の少女の揺らぎが「あたし」として書かれているのに突き放された客観性というものも感じられて、読んでいて絶妙な切実感がありました。やっぱりあさのさんは思春期の少年少女を描くのが上手なようです。

 十代って残酷な時期なんだ。
 十八歳の今、つくづくと思ってしまう。
 とても、残酷な年代なのだと。
 否応なく全てが変わっていく。変わらされてしまう。留まることは許されず、立ち止まることも許されない。ただ前へ、前へ、先へ、先へと進むだけだ。急流に浮かぶ小舟みたいだ。
 十代ほど、たくさんの人に出会い、たくさんの人と別れる時代はないような気がする。出会いと別れを繰り返す時代、「さようなら」そんな別離の挨拶とともに、二度と会えなくなる人たち、その人たちをいつの間にか忘れていくわたし、忘れられていくわたし。出会いも別れも生々しく、儚い。
 残酷な年代だ。