路上観察学入門 (ちくま文庫)

路上観察学入門 (ちくま文庫)

考現学の授業でトマソンの存在を知って、面白い世界だなあ、もう少し知りたいなあと思ったのに結局出席したのは数回きりだったことを今になって後悔しています。「今和次郎」という名前を先生の口から何度も聞いたので覚えていたのですが、本を読めば読むほどに興味をそそられて、比較的ゆるやかな授業だったので今もやっていて時間割が変わっていなかったらもぐらせてもらおうかな、なんてことまで考えたもののよく考えてみれば遠かったので本をたどっていくことで欲を満たすしかなさそうです。
路上観察に関する紹介と実践している三人による鼎談とそれぞれに追っているものがある人たちのレポートのようなもので成り立っていて、荒俣宏さんのは少し噛み砕く必要がありましたが他はさくさく読めて好みのポイントをいくつも突かれてしまいました。マンホールのフタなどオーソドックスなものにも触れられていて、私も歩いていて疑問に思ったものや統計を取ってみたいなと感じたことはあったのですが実際に行動に起こしたことはなかったので、非常に興味深かったです。林丈二さんによる記録がたまらないもので、ヨーロッパ旅行に行った際の放屁採取やパリにおける犬の糞調べなんて、うっかりすると惚れてしまいそうでした。
そしてこの本を読んでいる途中、伊集院さんがラジオで最近やっていることを話していて、その内容がウォーキングをしながらインディーズの犬の糞をするな看板の写真を撮っている等々、路上観察に関するものだったのでこのめぐり合わせは一体何、と運命を感じてしまいそうになりました。
やっていることはみうらじゅんさんやタモリ倶楽部のような世界で、今やそれが認められてしまって商売としても機能し始めているので、この本が出てから二十年近く経っているためこの作品自体が時代性を持ったものになっていることも面白かったです。

僕らがおもしろいというのは、まず芸術作品じゃないんだな、あれは本能的に受けをねらっているから、受けることだけが芸術の実用性でしょう。変なハリガミとか、マンホールとか、純粋階段とかは芸術と違って、本当は具体的に役に立つものだけども、何かの事情でそれがちょっと変になって、実用からズレた部分が発生している。そこが面白い。

鼎談からの引用ですが、この説明はまさに伊集院さんの視点に合っていて「エンタの何様」というコーナーなんてそのものすぎて思わず笑ってしまいました。トマソンに関する本も読みたいので、これから図書館で見つけたら即座に手に取るつもりです。