ことばの食卓 (ちくま文庫)

ことばの食卓 (ちくま文庫)

「た」
なかなか見つからなくて放っておいた「せ」と「そ」が抜けていることをすっかり忘れて、先に読んでしまいました。「富士日記」を読みたい読みたいと思っていたものの、じっくりと味わいたいのでそれはお楽しみにとっておくことにして、タイトルにひかれたこの作品をまずは先に。
綺麗で流れるような、でも上品すぎない文章がすっと入り込んできて、各エピソードごとに差し挟まれる野中ユリさんの作品が「百頭女」のように不気味な色気を放っていて、にこやかな笑顔の奥にある蠢くものまで想像してしまいました。のんきにしているように見える人ほどそのかげが濃いように、どことなくひやりとした印象まで受けてしまう、「情」ということにすいて少し考えさせられました。でも彼女の文体や視線が気に入ってしまったので、時間をかけてこれからも読んでいきたいです。