文藝 2009年 08月号

文藝 2009年 08月号 [雑誌]
ルミネが何でも一割引とあって、この際本も色々買い込もうと思ってナイナイのラジオ本を手に入れようとしていたはずなのに、今更文藝の特集が小川洋子さんと知り、つい手に取って見てみたら最後、インタビュー記事を担当しているのが堀江敏幸さん!
小川さんの新作はせいこうさんが酷評していたこともあってまだ手を出せずにいるのですが、彼女の世界観が好きなことは否定できないので、もう少し経ったら読むことになるでしょう。そして肝心の特集は対談相手が遺体科学者さんと脳科学者さんで非常に興味深い内容な上、堀江さんのインタビューというよりほとんど対談ですが、そのやりとりが思いっきり私好みの内容でした。
メモしておきたかったのは、小川さんがずっと同じことを書いていると自分でも感じていると言ったことに対しての堀江さんの発言。

最近、若い人たちと話をしていると、物書きが同じテーマを繰り返してはいけないように思っている人がいるんです。ところが作家の仕事というのは、同じことを繰り返しつつ、中心部を少しずつずらしていって、全体としてどれだけ辛抱強く反復に耐え得るかにかかっていて、そこが大事なんですね。

そうかー、そうかー、と読書の仕方がこれでまたひとつ増えました。今までは似たようなテーマばかり扱っている作家さんに対して飽きた、とまではいかないまでも首を傾げたり読み方もおろそかになったりしていたのですが、繰り返し書いていても深度や角度が少し違っているというところまできちんと目を向けようとしていませんでした。作品が増えることによって同じテーマを描いていても視点が少し違うから総合的に立体となって見えてきたりもするわけで、一つだけで完結していないから単体の作品として至らないという見方もできるかもしれませんが、重なることによって世界に厚みが増していくという見方もできるわけで、なるべく楽しんで読書をしたい私としてはなるほどなるほどと思うところが多かったです。

小川さん以外にも柴田元幸さんによる「書き出しで読む『世界文学全集』」の連載があったり、喜多ふありさんや白岩玄さんなど若手の書き手による小説があったりして、ユリイカの特集号ではいまだに読んでいないところがあるのですが、文藝は文芸誌の中では割合ポップで読みやすく、ぺろっと一冊いけました。