きつね月

きつね月

「きつね」
偶然にびっくり、自分の記憶力のなさにびっくり。先日から多和田さんの作品を読み出して、彼女の名前をどこかで聞いたことがあるなあ、という程度にしか思っていなかったのですが、はまぞうで検索してみた時にそのわけがわかりました。二年前に彼女が出ている番組を見て、その中で一つの作品が朗読されて気になっていたのですが*1、今回この本を読んで一番気になった作品がそれでした。探していた本に無意識のうちに行き着いて、無意識のうちに気になっていた、なんていう偶然は単に意識のどこかでひっかかっていたからなのかもしれませんが、それを知った時には素直に驚いてしまいました。言葉遊びをしているような、様々な表現をした「かける」という作品がそれ、でした。
他にも他人の夢をのぞいているような、一つひとつの文の関連性を考えてもまるで意味のないようなイメージの断片の文章が綴られていて、一度ドイツ語で書いたものを日本語に翻訳したという作品もあるらしく、物語として楽しむというよりも頭の中で言葉をもてあそぶという行為を促されているようでした。意味がわからなくても、単語の響き、そこからわいてくる映像でそれぞれに次の展開を作っていく楽しさがあって、気分次第ではまったく違った印象を受けそうです。できればまた忘れた頃に、運命的な出会いをしたい作品です。