どんより曇りの日常は閉じます。
薄情にもほどがあるというぐらい無感動で、果たして私は大丈夫なのだろうかと心配になるほどだった。いつも誤った方の選択をして、イメージトレーニングは完璧なのでそれで落胆したりはしなかった。今回ばかりは洒落にならないことなのに、最悪の事態をいくつも考えて準備をしていた。猫の時にも同じ行動を取っていて結局は何の耐性もついていないとわかったのに、止めようがない。
現実逃避の一環でライブに行って、週が明けたら現実しか残っていなかった。それでもまだ逃げたくて本を手に取ったら、同じような状況が描かれていた。波乱万丈はいらないから、もっと穏やかな日常が欲しい。
外に出てやっと、自分が動揺していることがわかった。心配と緊張が身体をふわふわと浮き上がらせていて、なるべく考えないようにしていたけれど一日中そわそわしていた。駅まで歩く道すがら、試しに声を出してみたらふるえていた。
続けて読み始めた本にはおよそ二十年ぶりぐらいに乗る列車のことが描かれていて、自分の選択なのか何かからの示唆なのかわからなくなって混乱してしまった。小説に出てくる通りその車両は小さく不安定に揺れて酔いそうになった。ネオンがどんどん遠くなっていく。
ドラマや友人の話として聞くだけのものだった情景を初めて目にした。すべてはリアルなのにすべては空虚だった。この光景を焼き付けておかなければ、と強く思った。想像していた最悪の事態までに至ることはなく、予定の少し斜め下に状況が悪化しただけだった。前を歩く背中は頼りなくなっていて、守られるのではなく守る時期がきたのだと悟った。
場を和ませるつもりが口からついて出たのはブラックジョークばかりで、自分の不謹慎さに呆れてしまった。そんなニヒルなところも素直になれないところも受け継いだものなのだから、もっと、その本家を私に見せてほしい。憎まれ口はいくらでも用意しているから、早くその口で言葉を紡いでほしい。例え音が発されないとしても。