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- 作者: 多和田葉子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/03
- メディア: 単行本
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教育のあるないは階級の問題であって、個人の問題じゃないんですよ、同じ階級の人は話し方でわかるようになっているんですよ、同じ雑誌を読むように努力し、同じファッションを選び、互いに点検しあっているんですよ、人の評価が混乱しないように、だから喋り方もね、同じでね、まあ、あなたにはまだ分からないでしょう。
煙に巻かれるようなこの感覚! 十五年も前の作品なのでズレも多少はあるのかもしれませんが世界観がとても私好みのもので、現実と非現実が織り交ざって、比喩としているのか示唆しているのかそのままなのかいかようにも読める表現もあって、淡々としているように見えるのにどこか官能的でした。一文がとても長くて気持ちもずずずと引っ張られてしまうところもあったり、女の人らしいなと思う描写もあったり、ヨウコさんつながりで初期の小川洋子さんの作品が好みである私にとってはどんどん引き込まれてしまいました。のめりこんでしまうほどに、他の作品も読みたいです。
ストーリーを作るのは、簡単だ。自分のことを話せと言われると、話すことが何もない私も、他人の話なら、いくらでも作れそうな気がする。もともと私は、何かの出来事に巻き込まれるタイプではないのだと思う。綾子のような人のまわりに、出来事を作り上げて、綾子をそこに巻き込んでしまいたいと思う。