同じストーリーでも見せ方が違う二つの映像。一つ目は風景の音のみで人の生声は字幕で示されていて、二つ目は時折フランス語でナレーションが入るという、さようですかという内容でした。最初の方は風景が映し出されて、そこにある虫や川の音だけが耳から入ってくるものだから奇妙な感覚に陥ってしまって、話しているはずの人間の動作が少し大げさすぎて現実に立ち返ったりもしましたが、サイレントでもトーキーでもない、その中間の世界にまどろみながら入り込んでしまいそうでした。二つ目の方はアングルが人間に近づいたものになっているせいか、あるいは肉声がきちんと発されているせいなのか生々しい、というような印象。しかもフランス語のナレーションには字幕がついていて、それが気取っているものだから笑ってしまって、色々含むところの滑稽さにまたしても奇妙な感覚を抱いてしまいました。どちらの世界もおんどろおんどろしていて、自然が多いのどかな田舎の景色があるのにそこで渦巻く人間の欲が際立っているようにも思えました。