どーなつ (ハヤカワ文庫 JA Jコレクション)

どーなつ (ハヤカワ文庫 JA Jコレクション)

表紙が西島大介さん、出てくるキーワードには火星、あたま山など、引っかかるものがたくさんありました。軽く読めるだろうと思っていたら大間違いでした。SFものでも現実の延長線上にあるのでとっかかりやすかったのですが、短編で一つ一つ完結しているかと思いきや関連しているようなところもあって、あれこれは誰の一人称なのだろうか、これとこれとは同一人物なのだろうかと翻弄されっぱなし。核心をつかずにそれぞれにストーリーが展開していって、タイトルのドーナツのようにまわりだけ囲ってあるかのようでした。これはどういうことだろうかと首をひねりながら、わからないところはわからないままでもいいやと曖昧にするのも楽しみの一つでした。そういうところを考えるのが好きな人にとっては、噛み砕きがいのある世界なのかもしれません。