ドラママチ

ドラママチ

家と女と恋と愛と役割と、角田さんの描く人物には毎回何かしら引っかかるものがあって、この作品でも電車の中でつい物語に入り込んでしまいました。一番印象に残っているのは、表題作の中にちらっと出てくる、年老いてしまった大家さんでした。夫に先立たれて一人きりで大家の仕事をしていて、外国に行ったこともなければ国内旅行もままならない、そんな彼女が唯一の楽しみとして見つけたのが外国に行った気分になれるカフェめぐり。きっとその風景だけ切り取ってみたらものがなしいものとして映るかもしれませんが、だからといってその人自身がかなしいとは限らないわけで、そもそもかなしいからといってそれがふしあわせだとも限らないわけで、大家さんの人生について色々と想像してしまってあやうく乗り過ごすところでした。それぞれの話が中央線沿線のもので、何かしら喫茶店やカフェが出てくるので、そういうコンセプトがあるところも気になりました。