愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ

愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ

ちょっと違った系統のニュアンスもの、とでもいうのか想像していたようなものとは少し違っていました。現実的でもファンタジーでもあって、性的でも暴力的でもあって、女性のためのものでも男性のものでもあって、愛の物語である。文体が結構独特で読点が文節ごとに置かれているのでスピード感を持たせるというよりも一つ一つを区切って足止めされてその単語を味わわされるような感覚がありました。ただ使いたいフレーズがたくさんあるためなのか似たような表現が続いてしまって、途中内容を読むのではなく文字を視覚としてなぞってその形を味わうようになってしまいました。湧き上がってくるいくつもの単語があって詩的でもあるのに、さすがにそれがずっと続くと平坦的な印象になってしまったのがちょっと残念です。それでも好きな人はかなりどっぷりとはまりそうな世界観と文体です。ちらっと彼女のことを調べてみたら賞を巡って色々とあったようで、しかももともと日本語で書くつもりではなかった作品と知って、読んでいる時にあった違和感がすっとなくなりました。