哀しい予感 (角川文庫)

哀しい予感 (角川文庫)

昔に読んだ内容をすっかり忘れてしまっていて、記憶との違いを確かめながら見るのも良いかなと思っていたのですが、なんとなく読み返したくなってしまったので今週末の舞台前によみがえらせることにしました。一時期はよく読んでいたばななさん、「アムリタ」がとても好きで何度か読み返したりしていたのですが次第に遠ざかっていました。
彼女の作品を読むと、空白に、行間におしつぶされそうになってしまうので一つ一つのセンテンスが短かったり比喩表現が多かったりしても疲れてしまうのかもしれません。隙間に飲みこまれたたくさんの言葉が埋められていそうで、迂闊に墓場を掘り返してしまっては大変、と濃密な世界を久しぶりに味わいました。そしてこの作品を読んでいる時に再びアルバムリーフの曲が聞きたくなってしまって、流しながら文字を追っていたら世界にぴったりと寄り添って映画を見ているかのような錯覚まで抱いてしまいました。
独特の空気と選ばれた会話と狂いながらも辻褄が合っていく行動は、運命論を観察しているかのようにも思えて懐かしい気持ちにもなりました。この世界が塚本さんによってどう描かれるのか楽しみです。