エバーグリーン

エバーグリーン

豊島さんの作品を読むと、くすぐったくなりながら「女の子」のことをつい思い出してしまいます。わたがしみたい、という表現も出来ますが、それは単にやわらかくて淡くて甘いということではなくて、甘いけれど一気に食べると飲み込めなかったり、砂糖が固まっていて妙な味になっていたり、一方的なイメージを植えつけるならばわたの部分についている白い粉のようなものを砂糖と思ってなめてみたら実は塩でしょっぱかった、という印象でした。まさしく青春もので、少女漫画みたい。けれど甘い甘い世界だけではなく、その後をきちんと描いていて、恋愛ものではあるけれど彼女が同世代であるせいか共感してしまうところも多く、出てくる固有名詞も同じ時代を生きているからこそ感じられるものだったりして、間の取り方や会話のリアルさが何ともにくかったです。なりたかったものや、昔好きだった人や、語った夢。それと現実を知った今、あきらめたことや変わってしまった友人や何度も思い出すシーン。「今」だからこそ気になってしまうのかもしれなくて、きっと受け付けない人もいるのでしょうが、ハチクロのような世界が好きな人は気に入ることでしょう。