イレギュラー

イレギュラー

ならずものと正統派の高校球児の対比に水害による避難生活のその後、それに加えて脇役のキャラの濃さがあって、描き方はとてもオーソドックスなものなのですが安心して物語の世界に入り込むことができました。文章も今時の口語体がありながら野球の専門用語も織り交ぜつつ、さほど知らない私でもイメージしやすいよう工夫がしてあって、地の文はしっかりとしているので表現においてハラハラすることもありませんでした。小さな波のある一つ一つのエピソードが終盤の盛り上がりに向かってぐわっと大きな波になって向かっていって、クライマックスの切り方も王道ながら上手だなあと感じてしまって、これは映像化したら陳腐になってしまうかもしれないけれどドラマの描き甲斐がある作品になるだろうな、と想像を膨らませてしまいました。