SHINJUKU LOFT 30TH ANNIVERSARY "ROCK OF AGES 2006"

フロアに入っても割とガラガラで、七時間近でもスペースがゆるゆる。面白い組み合わせなのにこんなに人が入っていなくて大丈夫だろうかと心配しながらジンジャーエールをちびちびと飲んで開演を待ちました。


メレンゲ
振り返ってみると三組の中で一番の入り、だったかもしれません。たっぷりやるよ、とクボさんが言った通りイベントライブとしては結構長く50分ぐらい演奏してくれました。何の曲をやったのかあまり覚えていないのが自分のイメージ遊びをした弊害なので痛いところですが、確か「輝く蛍の輪」から始まって昔の曲が多く、久しぶりに「チーコ」も聞けて、その世界が少し鬼頭さんのようだな、と思いながら頭の中の景色を少し自由にしてやっていたら、新たな印象が浮かんできてしまってあららあららと大変なことに。
メレンゲが描いている世界は鮮やかというよりパステルカラーで淡い、やわらかなイメージで、少年少女の無垢だったころを思い返したり、夢の中で役として演じているようだったりするのですが、その綺麗で淡い世界が展開していく中で見る一瞬の悪夢のようなもの、一カットだけサブリミナルのように差し挟まれる残虐なシーンのことを思い描いてしまって、そうか、完結しているようでいて破綻しているから彼らの世界にひかれてしまうのかもしれない、と勝手に結論付けてしまいました。例えばMCでクボさんが「underworld」という曲名をずっと使いたかったと言って、後でその意味が「地獄」だと知ってびっくりした、と言ったほほえましい話があったのですが、無邪気の邪気のようなもの、無意識の意識、奥底に流れるかげが、きらきらしただけではない曲の世界のことまで考えを巡らせてしまって、12月11日のことにぐらぐらと気持ちが傾いてしまいました。最後の「ユキノミチ」はこれからの寒い季節のことを思い出させてくれて、遠い記憶までよみがえってしまいそうでした。クボさんの声も良く出てて皆川さんもナイスなサポートで、昔の曲もじっくりとたくさん聞けたので良かったです。そしてAXは広い、とやたら宣伝していたので、入りが相当不安なのかもしれません。


つじあやの
考えてみればライブで見るのが三回目になるつじあやのさん、今回は夏フェチと同じくウクレレで弾き語りスタイルでした。前後の二組が長かっただけにほんの数曲であっという間でした。あまりに短かったので急遽アドリブで一曲増やしてくれてありがたく、この前発売されたアルバムの中の曲やニューシングルに収録されるものも歌ってくれたのですが、今日これは危険だ、と思ってしまった瞬間があったのは、カバー曲の「頼りない天使」でした。UAが母性を感じさせる力強いもので、郁子ちゃんが含みを持たせて頑固な心をとかせていくようなものだったのに対して彼女の歌声はやわらかく優しく、ゆっくりと体温を感じさせるように包み込んでくれていて、途中の口笛までも表情があって、曲の良さに加えて声のやわらかさにくっとこらえてしまうものがありました。


SCOOBIE DO
見るのが二年ぶりぐらいだったせいか心の準備ができていなく、ちょっと上滑りかな、と思ってしまったのは憂鬱なことを色々と考えてしまったからで、思い思いに踊るお客さんがとても理想的なライブの姿のように見えました。フロアはゆるゆるでしたが、本当に自分たちの好き勝手に体を動かしていて、ステージと客席の関係性がとても良く、楽しくて自然と手拍子もしていました。熱く厚く激しい演奏に鼓膜が震えるぐらいエネルギーの込められた言葉はまぶしくて、距離が近すぎると冷静になってしまう自分がいるので、ステージ全体と挙がるお客さんの手がたくさん見えるぐらいの位置で、一気に温度が上がったフロア全体の空気を味わっていました。斜めに構えている人までも巻き込んでしまう彼らのライブは、今度こそフェスで見ていたいです。野外に放たれるエネルギーは、きっと心地良いのだろうなあ。


個々だと割合お客さんを集めるのに、変わった組み合わせだったせいか満員になるほど入っているわけではなくて、何とももったいない気分でいっぱいでした。どれも見たかった私にとっては一日に様々な世界を味わわせてくれてとてもおいしかったです。「頼りない天使」は不意打ちでした。