貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)

貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)

買ってからおよそ三ヶ月間放置、それなのに読み始めたら数日で終わってしまいました。睡眠不足で眠いはずなのに読み始めたら止まらなくて、途中ぐぐぐと沸きあがってくるものには我慢我慢と押さえつけもしました。
やっぱり私は彼女の選ぶ単語ひとつひとつが好きらしく、映画化されて感動系の作家だと思われがちかもしれませんが、どこか漂う穏やかな狂気に惹かれてしまいます。ありがちな女流作家の文章やストーリーだと言われてしまっても、突拍子もない設定でありながら現実感がしっかりと植えつけられているところが好きで、登場人物が必ずどこかしら欠けていたり閉じ込められてしまったり、ゆるゆると息苦しくなっていくような描写がたまらないのです。
馴染みのない単語が出てきたとしても彼女の作品を読んでいると別の意味さえ出てくるかのようで、妙な色気が漂ってくるから不思議で、文体としては乾いている印象を受けるのに後を引くから余計に気になってしまいます。「薬指の標本」がフランスで映画化されているので、感動系ではない彼女の世界観がどう映像で表現されているのか、かなり見たくて困るほど。