■
- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 文庫
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (49件) を見る
やっぱり私は彼女の選ぶ単語ひとつひとつが好きらしく、映画化されて感動系の作家だと思われがちかもしれませんが、どこか漂う穏やかな狂気に惹かれてしまいます。ありがちな女流作家の文章やストーリーだと言われてしまっても、突拍子もない設定でありながら現実感がしっかりと植えつけられているところが好きで、登場人物が必ずどこかしら欠けていたり閉じ込められてしまったり、ゆるゆると息苦しくなっていくような描写がたまらないのです。
馴染みのない単語が出てきたとしても彼女の作品を読んでいると別の意味さえ出てくるかのようで、妙な色気が漂ってくるから不思議で、文体としては乾いている印象を受けるのに後を引くから余計に気になってしまいます。「薬指の標本」がフランスで映画化されているので、感動系ではない彼女の世界観がどう映像で表現されているのか、かなり見たくて困るほど。