色々な方のものを読んで楽しんでいたバトンが、まさか自分に回ってくるとは思ってもみなかったのでスタート地点であわあわしていました。同じ空間でサッカー観戦をしてソウルセットのライブを味わっていたツルキさん*1よりReading Baton(id:R225さん版)をいただいたので、じっくりと考えてみました。ありがとうございます、次は野音ソウルセットで!


*今部屋の棚に並んでる蔵書の冊数
本棚には漫画と本が半分半分ぐらいで、あとは写真のアルバムとCDが入っているのであまり量はありません。最近買ったものは次々と床に積み込まれていっているので、何冊かを推し量るのは難しいです。ただ平均より低いということだけは確かです。


*最後に買った本(マンガ)

あきれるほどのゆくえ (WORD&TRAVEL BOOKS)

あきれるほどのゆくえ (WORD&TRAVEL BOOKS)

本、ということならば先日紹介したビッケの作品です。ソウルセットのサイトから購入できるので、あきらめていた方はこの機会に是非。歌詞も載っているのですが、歌詞カードで見る時とまたちょっと違った見方ができるのではないかと思います。前半部分の文章は黙読しているのに彼の声がどこかから聞こえてくるようで、詩的な単語を見るだけでも楽しめます。
雑誌ということならばクイックジャパン広告批評を一緒に買いました。でもまだ読む時間がなくて、手付かずです。


*今読んでる本(マンガ)

砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

読み止しの本はたくさんあるのですが、すぐ取り出せる位置にある本はこれでした。ソウルセットと縁深い、ということで別に宣伝しているわけではないです。読むのに時間がかかりそうなので、ゆっくりと文章と波長が合ったときに読み進めることにしています。翻訳ものは苦手なのですが、噛んで噛んで、自分の中で吸収していきたい作品です。



*よく読み返す本、または自分にとって特に思い入れのある5冊

密やかな結晶 (講談社文庫)

密やかな結晶 (講談社文庫)

本を読むべき環境にいたのにあまり読んでいなくて、少しずつ読むようになったのは大学に入ってからでした。ある授業で毎回本を紹介してくれた先生がいたのですが、彼の口調に引き込まれて不思議と読むようになりました。そのきっかけとなったのが、この作品。今では大好きな小川洋子さんの作品とはここで出会いました。
博士の愛した数式」が有名ですが、それを読んだ人にはぜひ他の作品も読んでいただきたいです。彼女の描くゆるやかな狂気というものが私はとても好きで、誰もが少しずつずれていたり、何かを失っていたりするところに興味を引かれるのです。彼女の作品のイメージはなんとなく西洋で、今度「薬指の標本」がフランスで映画化するというのにもごくごく自然な話に思えました。
またこの作品には出てきませんが、理系のものを彼女の文章で描いた時の妙な色っぽさ、というのもたまりません。
何かを概念ごと一つずつ失っていく世界を描いたこの物語、丁寧な描写がイメージを増幅させて、感情がふらふらとさまよいはじめます。女の人が描くゆるやかな狂気を見てみたい方は、まずこの作品をおすすめしたいです。


人の砂漠 (新潮文庫)

人の砂漠 (新潮文庫)

情景を描写するということ。事実を縁取る文章、その切り取り方。この作品も先生に紹介されていたもので、聞いて面白そうだったので読み始めたのでした。そして見事に、ドキュメンタリーやルポルタージュに興味を持ち始めました。
小説のように自由に書けるわけではなくて、そこにある事実は決して変えられないのですが、自分の視点を織り交ぜたり感情を一切排除した文章を綴ることによってただの羅列だけではなくなる、そんな文章群でした。一番有名な深夜特急シリーズはまだ読んでいないのですが、彼の他の作品を読んでみて、弱者を多く描いているのでとても好きになりました。
新聞の記事に数行載っただけのような事件の裏にあること。「おばあさんが死んだ」を読んで毎回何とも言えない表情になっても、それでもまた読もうと思わせるだけの力がこの作品、そして沢木耕太郎さんにはあります。


砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

大学の図書館で安部公房の全集を見つけて、まずは装丁の美しさに惚れてすべて集めたくなりました。彼の作品も非常に好みなので、いつか余裕ができたら一つ一つそろえていきたいです。
そしてその彼の作品の中で一番好きなのが、「砂の女」で、小説に加えて岸田今日子さんが出演されていた映画版も好感度をあげているものの一つです。
閉塞された空間の中での人間の描写が生々しく、小さな物体である砂の表情までもが見えてくるようで、息苦しいのに心地よい状態に陥りました。まるで蟻地獄にでもはまってしまったかのよう。一時期安部公房に影響を受けすぎていたのですが、今は多少落ち着いたので、また別の作品を読みたいと思っているところです。


からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ」を一番最初に読んで気になって、「裏庭」を読んでファンタジーの世界に引き込まれ、この作品でノックアウトされました。梨木香歩さんの文章はとても女の人らしくて、登場人物にも現実味があった上に魅力的なので、読んでいるうちにどんどんと感情移入していきました。
同居を始めた四人の女の子の不思議な縁。そんな偶然あるはずがないと思う気持ちがあるのに、でも現実だってそういうあるはずのないことがあるのだからと納得してしまうぐらい映像が見えてくる作品です。最後の方、我慢しても我慢しても涙が出てきた記憶があります。
実はこの作品、友達に貸したまま帰って来ないので読み返したくてもできないのがもどかしいです。


文体練習

文体練習

四冊まではすんなりと出てきたのですが、五冊目はなかなか決まらないのでフリー枠として、「変身」と「タルコフスキーの『鏡の本』」と迷った上、こちらの作品にしました。
ある一つの文章をさまざまに変えていくだけのものなのですが、これがなかなかおもしろいです。翻訳ものなのにちゃんと原作にそった形になっているのも気に入りました。見ても楽しいし読んでも楽しい、考えても考えなくても読めるしどこから読んでもかまわない。書くのにはものすごい時間と労力が必要だったんだろうなと思いながらも、読むほうはとても軽々と進められる作品です。言葉遊びが好きな方は、図書館などにあると思うので一度手にとってみてください。きっと欲しくなります。


*バトンをタッチ
最近はあまり本について考えることがなくなってしまったので、しばらくは背中を使って自分で自分にバトンを渡して遊びたいと思います。最後までおつきあいくださいまして、ありがとうございます。