『偶然』

キェシロフスキ・コレクションI プレミアムBOX [DVD]
どれを選んだか何をしたかによってすべてが決まって人生で、選択肢なんてそこらへんにいくらでも転がっているということを叙情的に述べている作品でした。作品の説明を先に見てしまったので『ラン・ローラ・ラン』のようにそれぞれの選択肢の世界を選べるということを知っていたのですが、それを思わず忘れてしまうほど、一つ一つの世界が詩的で、物語として楽しめるものでした。音楽も叙情的で、必要以上に流れてくることなく、どこか乾いた印象を受けました。
列車に乗るか、乗ろうとするも止められるか、乗ろうとするもあきらめるか。それぞれに違う女性と恋に落ち、どこかで会っていたかもしれない人とすれ違ったり刹那的な言葉を交わしたりするのは、神のような視点でいる私達の密かな楽しみでもありました。
どれを選べば良いという問題でもなくて、一つはたどりついているのかもしれませんが、どの結末も明確なものは示されておらず、最後にこうなったからしあわせ、というものでは現実で有り得ないことなので余計に厳しさが身に染みました。あの時ああしていれば思うことはよくあって、それを上手に描けているこの作品、今では良くある展開ですが、こんなにさらっと描いているのはあまりないような気がします。ますますボックスが欲しくなってきました。