FLAGE

FLAGE

新譜が待ちきれなくて聞いてみたら、想像通り野音のライブに行かなかったことや北海道で聞いておかなかったことを後悔してしまいました。いつかのどこかの、あるいはこれからの場所や情景について描写してあるように聞こえるのに、それがどこなのか最後までわからない、輪郭があやふやな世界。蜃気楼のようでいて、けれどそれほど揺らぎがないのが不思議でした。メインとなる旋律が存在していないようなのに、それぞれの楽器がささやかなる主張を持っているのであれ、とひっかかる場所がいくつもありました。音自体は目まぐるしくなる部分もあるのですが、長い長い時間をかけて表情を変えていくような、笑みをゆっくりと浮かべていくような、モーフィングみたいな印象を受けました。言ってみれば「アッコにおまかせ! 」の一コーナーにある、ブレインショックのようなもの。気づく人は最初からわかっているけれど、鈍感な私はいつまで経っても変わったことに気づかない。何はともあれ、1曲55分という新譜を早く聞きたいです。

青空チェリー

青空チェリー

檸檬のころ」の印象が強かったせいか、今時の言葉で一人称で描かれていると等身大というよりも無理して使っているような気がしてしまって、少しこそばゆかったです。R-18文学賞のものなので、それなりに赤裸々な描写があっけらかんとあったりするのですが、ねっとりとなまめかしすぎないのでお嬢さん方にも軽く読める内容になっていました。
最後に収録されている「ハニィ、空が灼けているよ。」という作品は、くくりとすればセカイ系に入るのかもしれませんが、戦争に関する描写はあくまで間接的で、守られる女の子側からの視点で描かれているのが珍しくもあって、なかなか興味深く読むことができました。ちょっと調べてみたら、文庫版だと大幅加筆訂正されているようなので、どう変わっているのかが気になります。図書館で見かけたら、豊島さんの他の本も読んでみたくなりました。