アナログフィッシュ「welcome back!! Pre tour 2009」

ぽろぽろと抜け落ちていく記憶の中で、せめて残しておきたいものをメモしておきます。
開演少し前に行ってもまだフロアに余裕があったのですが、開始時間には適度に埋まっていたので一安心。


カメラが何台か入っているのはアルバムの特典映像として収録するのだろうと思っていたのですが、生中継があると知って自分の情報の疎さにちょっと落ち込みました。ただ、そのカメラの近くにいたので、ステージと生中継されている映像との両方を味わえてマルチアングル仕様で見られたのは贅沢でした。何せ自分が今見ているステージからの見える景色までわかるのだから、チラ見してしまうのも仕方がありません。
いつもはどちらかというと下岡さんに意識が向いてしまい、しかも今回は斉藤さんおかえりツアーでもあるため、そちらが気になってしまう気持ちもあったのですが、なぜだか佐々木さんの歌声に引き寄せられてしまいました。「LOW」から胸に響いてきて、すっと入り込んではひねくれたところを巻き戻してくれる力強さは男らしくもあり、へたれ加減を感じさせながらも不器用な優しさが伝わってきました。とにかく今回は佐々木さんの歌声が染み込みました。
とはいいつつも一番最初の「NOW」は世界に取り込まれるかのように下岡さんの第一声に釘付けとなってしまい、今回バックスクリーンはないのに10月に見た映像が脳内によみがえってきては魚が泳いで展開していきました。「平行」から「TOWN」の流れでは、今までと同じではないのに、今までと同じであったかのような錯覚がおきて動揺し、この感覚は懐かしさではなくもどかしさでもなく、そうか自分の中で求めていたものが現実として起こっているのか、と枝分かれしていく感情とともに融解していくものがありました。下岡さん新曲の「Tomorrow」は過去から現在、そして未来へとつながっていく流れとしてはとても自然ではありますが、私自身がやっと現在に向き合えてきたところなので、受け入れられるにはまだ時間がかかりそうです。ポップな音に乗せられる前向きな歌詞はまだまぶしくて、どうしてもシロップの「Reborn」「明日を落としても」を思い出してしまいました。
「バタフライ」はAXで斉藤さんのドラムに目を奪われた記憶がまだ残っていて、ああこの音、このはね方……と、笑顔で叩く斉藤さんばかり見ていました。「Sayonara 90's」ではまだ、私は叫ぶことはできませんでしたが、斉藤さんが言う代わりにお客さんが「かっとばせ!」と反応することで自分の中で沸き上がるものはありました。
体温がずっと高いままライブを見ているような状況で、ステージから伝わってくる熱気とフロアから発される熱気が等価となっていると感じたのは、「アンセム」のコール&レスポンスでした。アナログにとってのロックはハーモニーで、それは三人が作り出す声。斉藤さんが戻ってきたことで正真正銘、アナログの音楽が完結したと思っていたのですが、ライブではその輪にもう一つが加わっていました。フロアで生まれたハーモニー、それはとても美しく、普段なら躊躇してしまうはずの私もためらうことなく声を出してしまい、疎外感を覚えることなく一体になっているのを感じました。ハーモニーはぐるりと円を描き、とても自然な形で心の内まで満たしてくれました。

時間が経って、兵庫さんのライブレポ*1を読んでものすごくしっくりくるものがありました。同じことを繰り返し言う、でも毎回その手法はちょっとずつ違っていて、どの程度掘り下げるのかというところも違っている。これは小川洋子さんが堀江さんのインタビューで答えていたこと*2と共通していて、そうだったのか、そうだったのかとただただ頷くことしかできませんでした。
貧乏性なのでDVDはタワレコにお世話になりますが、この日の映像も何とかならないかな、と思いつつ発売日を待つことにします。