堀江敏幸「未見坂」

未見坂
読書メーターは一口感想で楽なのですが、堀江さんの作品については私の好みにドンピシャすぎてどうしようもない思いがあふれてしまうので、だだもれになってしまった思いをここに記しておくことにします。読み終わった時はもっとたくさんの言葉が頭の中にあふれていたのに忘れてしまったので、怠惰をちょっとだけ後悔しています。
大きなドラマが描かれているわけではなく日常の些細で淡々とした情景が続いていく……という入りの紹介は実のところありがちですが、この文句が今回は当てはまっていません。大きなドラマが起こっているはずなのに焦点を当てるのはそこではなくちょっとずらした場所で、破綻したものがちらっと見えるので読んでいるこちらとしては、あれ?あれ?とついつい気になってしまう、でもそこは掘り下げられないためよりいっそう想像力がかきたてられてもやもや。子ども目線のものが多かったのですが、それと同時に老人もよく登場して、対比されるから余計に老いの悲哀も感じて興奮しっぱなしでした。
堀江さんの作品に関しては読み終わりたくないという気持ちが出てきてしまうので、ちびちびとお酒を嗜むようにじっくり読んで、密かなつながりに読み返してはため息。またしばらくしたら読み直したいです。もう一冊ちびちび進めている多和田葉子さんの作品も、続きが気になるのにもったいなくてなかなかページがめくれません。