『歩いても歩いても』*2

リアルにこだわりすぎているわけでもないのにリアルがにじんできて、「普通」であればあるほどに息遣いが聞こえてきて身に染みました。家族の間のつながり、同じ話ばかり繰り返したり役割を演じたりすること、ほのかにただよう倦怠感と安心感、痛いと感じるところも多かったです。家族映画と言っても血のつながりの強さや温かさに焦点を当てているわけではないので冷たさや恐ろしさもありました。あけすけに見えるけれどあくまで間接的なところがとてもリアル。おそらくこの作品をもっと若い時に見ていたら違う印象を抱いただろうし、何年か後にまた見たら新鮮な気持ちにもなるのだろうというほど、受け取る側の年代によってイメージが変わるものでした。
ちょうど樹木希林さんと同じかもう少し若いぐらいの奥様方が結構見に来ていたらしく、反応する箇所が興味深かったです。料理の仕方についてあれこれ言い合ったり年代ネタに笑いあったり、いつもとは違う客層で満席だったせいか、違った楽しみ方もできました。タイトルの由来も知ってなるほどーと妙に感心してしまいました。
是枝監督の作品は何度も見たくなるものが多いので、そろそろ『ワンダフルライフ』も見返したくなってきました。
一番ハッとさせられた部分をうまく説明できませんが、とりあえずメモしておきます。内容に触れるので短いですが閉じます。
阿部寛演じる次男のことを再婚相手の子供が下の名前で呼んでいて、実家へ行く際母親にその時ぐらいは「お父さん」と呼びなさいと言われながらもとぼけていて、それが実家でYOU演じる長女の子供たちと話している場面ではちょっとためらいながら、でもいつもそう呼んでいるかのように「お父さん」と言っていたのに、また本人の目の前では名前で呼んでしまう、というところが何とも言えず、ぐううとうなってしまいそうになりました。