小川洋子「夜明けの縁をさ迷う人々」

夜明けの縁をさ迷う人々
ストーリー重視の描き方になってしまったのかな、と少し残念に思っていたら、そうこなくっちゃという小川さんのねっとりとした世界を垣間見ることができました。破綻している、矛盾があふれて世界がほつれているのに成立している、不安で不安定なのに安らぎも覚えてしまうような、静かに穏やかに失くして閉じていく物語たち。距離があるのに濃密さを感じ取ることができて、各物語の扉に描かれている絵もまた素敵でした。