5 meters high and swimming

5 meters high and swimming

長いこと待っていたアルバムの一つは彼らのもので、一年前に「フレッシュゴーレム」でがつんとやられてから結局一度もライブを見ていませんでした。
全体的にファンタジー色が強くて、別の世界の景色を歌っている、描いているかのよう。歌声は感情をこめすぎず淡々と歌っているようにも聞こえるのですが、完全な無表情というわけでもないので細やかな表情の変化にさえ意識が向いていきそうになってしまいました。ある物語のストーリーテラーとでもいうのか、ナレーションでは無機質すぎるし当事者としては温度が低すぎる、突き放した部分も含めた適度な距離感が曲に深みを出しているような印象を受けました。曖昧な表現の中であなたとわたしの境がうすまっていく、霧がかった風景がすべてをうやむやにしていって視界だけではなくあらゆる感覚がしびれていくかのよう。
「フレッシュゴーレム」のアレンジもデモ版と違っていたのですが、好みの問題で言うとデモの方が好きでした。こちらは前のインスト曲と繋がっているのですが音源を取り込むと曲間でぶつっと切れてしまって余韻を引きちぎられてしまうのが残念です。装飾されていて埋められているのですが、デモの方が適度に隙があって、そこに自分の感情やイメージを埋めていくのが楽しかったです。単純に、ポコポコした木魚みたいな音がピアノ質のものに変わっていたという些細なこともあります。
帰り道に片耳から流していたら、月に向かって坂道を下っていくところでぴったりの部分が巡ってきて、イメージがあふれすぎてしばらく持て余してしまいました。寒さによって星がすんで見える分、こういう曲を聞くと危険なようです。
昨年見た時に内輪感が強かったのが少し残念だったのですが、結局のところ曲世界に入り込んでしまえばどうでも良くなるわけで、今度のライブもそんな世界を見せてもらいたいです。