アナログフィッシュ2007「SPRING SCRAMBLE SESSIONS.」

ノンアルコールだったのでもはや言い訳がききません。夜も更けてしまったので覚書程度で、という予定でした。夜更けなので内容ではなくイメージ多めです。


tobaccojuice
見るのはおよそ一年ぶり、かと思い込んでいたら半年ぶりぐらいだったのですが、これ以上期間をあけてしまうと求める力が強すぎてしまいそうで、これ以上頻繁に見てしまうと新鮮さが失われるというか妙な耐性ができてしまいそうだったので、私にとってはぴったりのタイミングだったのかもしれません。たまに会うぐらいで近況報告もしていないのに、今の自分の状態を的確に言い当てられてしまう友達のような存在。がっちりとはまってしまうものがありました。
相変わらずMCはちょっと不器用、だけどライブにおける彼らの力といったらものすごくて、久しぶりのライブだったせいだと自分を納得させようとしても「オレンジ」という曲ではもう手遅れの状態になってしまいました。言葉では表現できない気持ちのたかまりのようなもの、アルコールは一滴も入っていないのに高揚感がわきあがってきて、笑い泣きと泣き笑いの両方の感覚がありました。どうしようもない絶望を抱えているのに希望に手をのばす、底なし沼に下半身が沈んでいるのに、それでも太陽を見上げて笑顔を浮かべる、生きるということへの力強いエネルギーを感じて、人間臭さ、人の体温のあたたかさに動揺させられっぱなしでした。たぶん初めて聞いた「ヘッドフォン・ゴースト」という曲においても歌詞を噛み締めながら情景を頭に浮かべながら流れ込んでくる感情に揺さぶられて、過去にはとても楽しいことがあったけれど、今と未来にはもっと楽しいことがある、というようなMCのことも頭に残っていたせいか、彼らに対するイメージのようなものまでもかたどってしまいました。
浮かぶ景色はどれもくすんでいて、空気もきれいなようには見えない。灰が積もっているのか、舞っているのか、あるいは舞っているのは身体に有害の別のものなのかわからないけれど、それが「光」という存在によってがらりと印象が変わる。太陽の光を反射した粒子がキラキラと輝きだして、それがガラスの破片だったとしてもとても美しく見える。くすんでいた風景も太陽があることで味わいのある色へと変容していって、風で吹き飛ばされて原色が見える、というようなことは起こらないけれど、何層にもうすくうすく積もっていた灰の色がやわらかみを持つように見えた。
というような一つの情景が頭の中にずっと残っていて、彼らのライブは私にとって必要なものなのだ、ということがよくわかりました。ライブ自体は楽しいしステージ上で踊る松本さんを見るのも微笑ましいしバリエーション豊かなリズムに身を任せるのも心地良いのですが、抱えられた哀しみにも惹かれてしまうようです。是非とも実際に太陽の下で、フェスで見てみたいです。


アナログフィッシュ
楽しみにしていたアナログライブで、最初が「白黒ック」で、次々と演奏される曲も待ってましたというものばかりだったのに、タバコで受けた動揺がなかなかおさまらなくて、今日は心のキャパシティを越えてしまったからどれを聞いても駄目かもしれない、と諦めかけたのが途中までの本音です。佐々木さんの新曲も、ずれ眼鏡のまま叩く斉藤さんも、下岡さんの「夕暮れ」や「出かけた」も聞けて満足できるはずで、曲の一つひとつが景色を持って世界を繰り広げていくというのに、心だけがなかなか現実へと戻ってきてくれなくて、さてこれはどうしようかと要相談状態。
だったのですが、下岡さんが本編最後に披露してくれた「さよなら90's」という新曲とその直前のMCでぐらぐらしていた気持ちに別の揺れが出てきて、わざと見ないようにしていたことに直面させられているかのごとくあわあわしてしまいました。無意識が自意識になって過剰になって多少落ち着く十代をまるまる90年代で生きてきた私はいまだに90年代の気持ちを引きずっていて、下岡さんのようにまだ吹っ切れるところまできていないので、そこは触れないで、と願いながらも歌われる言葉につい耳を傾けてしまいました。love,love,so sweet.思春期を生きた90年代のこと、消そうと思っても消えない過去、どれだけ否定しても根本を形作っているもの。それらを断ちきることはどうしたってできなくて、困ったことに私はそのもやもやした状況をも楽しんでしまっていて、前を向かなければ転ぶとわかっているのについ振り向いてしまっています。下岡さんのように吹っ切れる時がくるのだろうか、と思いながらまたしてもアンコールの「公平なWorld」に動揺させられてしまいました。タバコの松本さんのMCを引き継いだかのような視線の繋ぎ方、いままでよりもこれからのこと、自分が立っている地面のこと、変わらないリズムのこと、目覚まし時計のあの音、目が覚めない頭。頭と心を掻き乱されながらもライブの終わりとしては潔くとても美しいものになっていて、一つの世界の終わりを見たかのようで、後は宿題、と各々に渡されたものがあるようにも思えました。


動揺の後に動揺、内面は大忙しでアナログに関しては最初どうなることかとさえ思ったのですが、行って本当に良かったと思えるライブでした。