enClorox

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ちらっとだけ流してみたら最初の音でまず引き込まれてしまって、もっとひねくれたものから始まると思っていただけに、郷愁を誘うような音が静かに流れているのはなぜだろうか、でも秒数が短いからきちんとした曲にならないままに終わってしまうのかもし、というところで次の曲に切り替わってしまって、そこからはもうどっぷり骨格のしっかりとした世界へ引きずり込まれてしまいました。音として好きというわけでも歌声に力があるというわけでもないのに、なぜか、本当になぜだろうかと首を傾げてしまうぐらいどの曲も気になってしまって、綺麗な声ではないけれど淡々と英語が流れてくるものだから、声さえ楽器の一部のように思えました。それぞれの楽器の音が独立して隙間が存在しているのに、その距離も間も嫌だと感じることはなくて、むしろ心地良いとさえ思ってしまう部分もありました。変態的というかひねくれているのに、その反対にあるものも連想させてしまう力があって、お手上げだと感じてしまったのは、最初の曲で少し流れていたメロディーが絶えず続いていく最後の「music box」という曲でした。ドラマティックに仕上げることもできるだろうし、ストリングスを入れたらもっと壮大になりそうなのに、余分な装飾は虚飾になってしまうとばかりにシンプルな構成で、一つ一つ楽器が増えていくと頭の中で浮かぶ単語が少しずつ変わっていきました。美しい、という言葉の反対にあるもの、その二つが共存していて、反対の言葉は汚い、ではなく穢らわしいという単語のイメージでした。それは少し品のある汚らしさではなく、どろっどろの、救いようもない目を背けたくなるようなもので、両極端な世界が描かれているからこそ反応してしまって、冷たい雨を受けながら何だか泣きそうにさえなってしまいました。理由はわからないもののイメージと言葉があふれてくるのが嬉しくて、どうやら彼らの音楽にひかれてしまっているようです。