924

やっつけるわけにもいかないので、残っていた仕事を終わらせてから準備をして原宿に着くともう三時。大急ぎでAXへと向かいました。野音は陽、AXは陰? 何にしろ晴れて良かったです。


もしかしたらdaimasさんの挨拶があったのかもしれませんが、残念なことに見逃してしまって、入ったらちょうど演奏が始まるところでした。


BIGMAMA
彼らの全身から発せられるパワーが強く、音圧というか音風というか、まったく知らない曲なのに最初からぐらっときてしまいました。若いからこそあふれてくるものってあるのだなあとしみじみ。
ベースボーカルでドラム以外の四人が全員歌っていたり、バイオリンが入っていて他の楽器と同じような扱われ方をしているのがとても自然だったり、重ねられる声が厚さを持って迫ってきて、途中なぜだか泣いてしまいそうになりました。英詞も似合っていて、意味を噛み砕く前に声と音に込められた感情が直接伝わってきて、身体を動かす暇もないぐらいに圧倒されてしまいました。あのエネルギーは何だったのだろう、もっと彼らのことを見てみたいなと思って調べてみたら活動休止ということで、しばらく見られないのがとても残念。


VOLA & THE ORIENTAL MACHINE
ワンマン行っていない身で何を言うかと自分でも思いますが、私にとってボラはイベントで見るぐらいがちょうど良いのかもしれません。物足りないと感じるぐらいがぴったりで、久しぶりに聞くと既存曲が自分の身体にすっかり馴染んでいることを再認識させられた上に楽しくてにやにやしてしまうし、新しい曲が演奏されるとどんな感じなのか興味津々でステージを見てしまいます。今回はLOVEの振り付けのある曲の、ベースラインがなかなか格好良いことに気がついて有江さんばかり見てしまいました。そしてアーワアーワと振りつきでカバーを歌っていたポリのフミさんカヨさんのコーラスがとても綺麗で、ほほえましかったです。
次見るのはまた何かのイベントかもしれませんが、微熱な感じの楽しさがステージから漂ってくるのが結構好きだったりします。


海北大輔・大岡源一郎
ベースがボラの有江さんで、ギターのサポートがBAZRAの鉄平さん! わーあーとサポートの豪華さに興奮しながらも、エレキギターを持つ海北さんを見てどうにも拭えない違和感がわきあがってしまいました。ベースを激しく弾きながら歌い上げる姿が好きだったので、まだ見慣れないせいか心配にもなりました。
新曲も披露されつつカバーしたのはチューリップの「心の旅」で、ぐぐぐいっと引き寄せられて最後はライブで聞きたかった「まだ故郷へは帰れない」でした。熱く激しく叫ぶようで、全身で海北さんは歌っているのですが、薄い膜が張っているかのように直接めりこんでは来なくて、急遽の編成だから仕方のないことなのかもしれませんが、どこかちぐはぐのように感じてしまいました。不安な気持ちはありますが、人生色々あるということで、静かに待つことにします。


lostage
こちらもベースボーカル。声が特徴的で、誰かに似ているようで似ていない、どこかで聞いたような気もするけれどそれが誰なのかがわからない、というもどかしい気持ちを終始抱いてしまいました。浅井さん、かとも思ったのですが重ね合わせられるほどに聞き込んでいるわけではないので、鋭さを持った声、としか表現できません。ひやりとした冷たさもある、でも拒絶されているわけではない不思議な魅力がありました。


(休憩は中門まで出入り自由で、出てみるとちょうどおみこしが通過するところでした。ふと空を見上げると飛行機雲が舞い上がっていて、辿っていくと一番上が拡散していて羽根のようになっていたのが印象的でした。私の携帯で撮ったとしても雲の形ぐらいしかわからないのが非常に残念です。)


POLYSICS
小難しいことなんて考えてないで、頭からっぽにして音に身をまかせるのが楽しいポリは、一番盛り上がっていました。今回のイベントの中で最もポップで、最も奇天烈で、ステージと客席との垣根も低く、テンション高いハヤシさんを見るのが面白かったです。盛り上がる選曲ばかりで、後ろの方にいたのですがジャンプしている人も多く、最後はTシャツにネクタイにグラサン姿のアヒトさんとともにP-MODELの曲をカバーしていて、一回も合わせていないと言っていましたがしっくりきていました。DEVOかと思ったのになあ。


peridots
髪が伸びすぎていたのか寝癖だったのかパーマだったのかわかりませんが、遠目だったので最初誰だかわかりませんでした。ステージ上にはギタースタンドとマイクスタンドのみで、真ん中に立ってスポットライトが当たる中、あのやわらかな声でタカハシさんは歌い始めました。カバー三曲、どれも色が違うのに彼が歌うとなぜだか同じ色に染められるかのようにしみこんでくるから不思議です。新曲は両方ともクワトロで披露されたもので、歌詞が気になっていたのは「eyes」とわかりました。「シェイクスピアよ行間で罰しないで」と歌っていて、一番でそれが「モーツァルトよ静寂で罰しないで」と確かなっていたのですが、個人的には最初は「律しないで」になっていた方が好きだったかな、と頭の中で思い返しながらも早くもう一度聞きたくなっています。「Raning,raining」は主張が少し入ったものでありながら、歌い始めの「Raning,raining〜」部分から景色がぶわっと広がっていくイメージがあるので凝り固まったものを感じさせない壮大さがありました。
あいにく30日は予定が入っていて行けないのですが、あの声をまた聞きに行きたいです。


BEYONDS
やわらかな物腰のMCとは裏腹に、様々な要素を持った音が奏でられていました。ちょっとボーカルが不安定なのか楽器の音が大きかったのか、歌詞が聞き取りづらかったのですが、あまり高音ではないところだと安心して耳をすませていました。渋い、というわけでもないけれど聞けば聞くほどに味が出てきそうでした。ドラムを叩くアヒトさんを見るのはたぶん初めてで、そうかこれがこの人の音なのか、と噛み締めながら聞きました。自分たちでもどういう位置にあるのかわからない、と言っていましたが、確かに何系、とくくるのは難しいかもしれません。


Syrup16g
挙げられる拳の向かう先にいる人。凝縮されるエネルギーの恐さを感じながらも、すっかり染み込んでしまったシロップの曲を生で味わっては揺らめかせて再び身体に浸透させてしまいました。静かに熱いキタダさんばかり見ていたら、途中で異様に激しいプレイをしていて歌声よりもそちらに気をとられてしまいました。新曲かなと思っていたものは泉谷しげるさんの「春夏秋冬」という曲で、矛盾で皮肉な歌詞がとても似合っていました。ラストはステージ上を見れば歴然、ということでボラメンバーが入ってツインギターツインドラムツインベースで「リアル」、ボラシロライブには行けなかったので初めて聞くことができました。アヒトさんと中畑さんが共に叩くリズム、贅沢。さらに有江さんとキタダさんのベースがあるので主に左側を見つめてしまいました。ただ一つ残念なのは、近くにいた人の録音機材なのか携帯なのかわかりませんが、一定のリズムでぴっかぴっかとずっと光っているものがあって視界の端に入るので意識がそがれてそがれて集中できなかったことです。


終演後に貼られていた「UP TO THE WORLD #3」は真っ白で、それをたくさんの人たちが記者会見のようにぱしゃぱしゃと携帯で撮っていたのが印象的でした。画素数が少ない私の携帯ではやはり何の意味もないので、頭の片隅に蓄積することで何とかやりすごしました。
昨年とは違ったカラーの924、今年も十分楽しませてもらいました。来年やるとしたら名称が変わってしまうかもしれませんが、こうなったら再び924が週末に巡ってくるまでずっとやり続けていって欲しい、と勝手に願っています。つながりがあるからこそコラボがあったりするのは嬉しいし、作られていく過程が見られるのはイベント前からわくわくして他のイベントとはちょっと違った楽しみ方ができるので是非、次回も。