電気グルーヴ“LIQUIDROOM 2nd ANNIVERSARY”

いつもの通り長々と書いていて、もうすぐかと思って足を伸ばした先にはコード、ぷつんと切れる音と真っ黒になる画面。というわけでここにあったはずの文字は頭の中に押し込めることにしました。大切な気持ちは、言葉では語りつくせないということなのかもしれません。
レポート的な要素は微塵もないですが、少しのことを記しておきます。


当初の予定ではシェルタ−でアートを見るはずだったのですが財布事変によってチケットがかなたへと行ってしまったので、運命のめぐり合わせによってやってきた電気のライブを楽しみにしていました。
初めてのワンマン、そのはじまりの曲が「N.O.」で、心の準備ができていなかった私は曲の内容がどうというよりもその音にこめられた記憶や感情がよみがえってしまったことにどう対応して良いのかわからなくて、油断したら号泣してしまっていたかもしれないと思うぐらいあふれてくるものがありました。演奏と言っても楽器が鳴らされているわけでもなく、音が重ねられていくとはいえカラオケのようなものではあるのですが、あそこであの音であの声であの空気の中に発されるということがとても大切で、今まで音源でイヤフォンからしか聞くことのできなかった曲が、歌が直に耳に入ってくるという事実に戸惑いを隠せずしばらく総毛立ったまま動揺してしまいました。
思春期だった十年ぐらい前の自分のことを思い返して、あの曲をカラオケで歌ったら無理やりのってくれた子がいたな、部屋であの曲をかけながら狂ったように踊っていたな、なんて記憶がぽつりぽつりとよみがえってきました。
サンプラーにドラムの音を仕込んでいたのかシンセドラムを使っていたのか、パーカッションとメンバー紹介されていた卓球は時折リズムを刻んだり前に出てきて歌詞を飛ばしながらもきちんと歌声を聞かせてくれて、ジャンプしたり蛍光緑のポロシャツをめくってみたりした瀧は割ときちんとした踊りも小力っぽい踊りもしてくれて、二人のかけあいMCも毒がありながら笑えるものでした。
音に記憶が刻み込まれている過去の曲と、少し離れてから聞いた曲と、今日初めて聞いた「日が暮れて気が触れて〜」というような曲と、そのすべてが綺麗な流れの一環としてあるようで、一瞬宗教みたいだと冷静になりかけてしまいましたが、いくつもいくつも昔のことを思い出してしまって、それでもやっぱり楽しいものでした。初めてというアンコールも味わえた上に、一番最後の曲が盛り上がるものではなく深みのある曲だったことも含めて満足です。今までワンマンを見てきた人からすれば歌ばかりで物足りないと感じる部分もあるのかもしれませんが、過去に見たイベントライブではプロモーションの要素が強かったので、きちんと曲を聞けただけでも嬉しかったです。


どんな曲を聞くようになっても、例え好きなジャンルが変わったとしても根底にあるものは変わらないのかもしれないな、とある種の確信を得てしまうぐらい、心と体の中に染み込んだ音から逃げ出すことはできませんでした。いやいやしかし、滅多に無い経験をしました。