ワンダフルライフ [DVD]

ワンダフルライフ [DVD]

調子が悪くておとなしく家に帰るしかないと自覚した時点で、帰ったらこの作品を見ようと決心していました。二年前に自分への誕生日プレゼントとして購入した作品。寒くなると見たくなって、見る度に違ったものに思えて、年を経れば経るほどに味が出てくる作品なのかもしれません。
BGMは自然の音のみで、会話もごく普通、作られた科白などどこにもないかのようで、一人ひとりの表情が自然そのもの。日常を覗いていると錯覚してしまうほどで、いつの間にか設定のことさえ忘れてしまいました。淡々と、丁寧に、決して押し付けたりせず適度な距離がとても心地良くて、でも少し切なくて、今日も見ながらほろほろと涙をこぼしてしまいました。映画やドラマを見ても泣いたりしないし斜に構えてしまうことが多いのに、一番最初に見た時にはそうでもなかったこの作品に関しては、見れば見るほどに涙の量が増えているような気がします。指先、その人だけしか見ることのできない景色、カップから立ち上がる湯気、どんぐり、忘れていたはずの幼い記憶。そのどれもが写真のように美しく切り取られている。
私はいつの、どの情景を選ぶのか? その答えを毎回投げかけてみるのですが、必要に迫られないかぎり選びきることができないみたいです。