町田昌弘プレゼンツ 「STAND!」

入ってびっくり、並べられた椅子。見回してびっくり、少ないお客さん。先日のフジファブリックではぎゅうぎゅうだったライブハウスは冷房が肌寒く感じてしまうぐらいゆったりとスペースがあり、飲み物を引き換えて椅子に座ってのんびりとじっくりと味わうことができました。贅沢すぎて申し訳なくなるぐらい、良かったです。


海北大輔・榎本聖貴(from:LOST IN TIME)
立ち見のお客さんもだいぶ出始めた中、ゆるやかにスタート。今回一番楽しみにしていた海北くんの弾き語りはなんと、ギターの榎本くんとのツインギターでした。二つあると音に厚みが出て、ベース好きながらもギターだって負けてない、と思ってしまうほどでした。
実は、声が少し好みとはずれていて、キーが高いと本当にきつそうに歌うものだからこっちまで心配してしまってドキドキしてしまうのがどうなのだろうと思っていたところだったのですが、今回やっぱりドキドキしてしまいながらも、彼のナチュラルなキーでささやいたり語尾の音が上がり気味になる部分の声がとても好きになってしまいました。のどで転がすような歌い方のところが好きです。好みとしては地声の方ではありますが、声にきっちり気持ちが込められているので、最初の「北風と太陽」からぐぐっと引き込まれてしまいました。ちなみになぜかメレンゲの「MR.NG」シャツを着ていてなぜだろうなぜだろうと気になってライブ終了後本人に尋ねてみたところ、「神戸のライブの時に交換したからね」というようなことを酔っ払い気味に教えてくれました。せっかく曲に聞き入っているのに、はてながいっぱいだったりドット部分がきらりと光るものだからちょっと困ったのも事実です。
ギターの榎本くんは「心を込めて弾きます」と言っている通り、真剣にギターと向き合って自分の感情を織り込んでいるようで、彼の指先を何度も視線でなぞってしまいました。歌声に惹かれるのに、目は弾かれるギターに行ってしまうという罠。特に「柊」という曲での彼のギターが印象的で、後でちゃんと曲を聞こうと決心しました。


石野田奈津代
透き通ってのびあがる、とても綺麗な声。MC中のキャラは少し田上よしえさんを彷彿とさせるもので馴染みやすく、曲はストレートですんなりと入ってくるようなものでした。声質がCoccoと多少似通っているためか、素直すぎる歌詞に違和感を覚えたりもしましたが、やっぱり綺麗な声は声で、なんだかんだで私は声フェチなのだという結論に行き当たりました。


近藤智洋(ex:PEALOUT)
この頃には立ち見のお客さんでフロアもかなり埋まって、年齢層がバラバラなのも見ていて楽しかったです。
名前は聞いたことがあってもPEALOUTの曲は聞いたことがなくて、でもここ最近読んでいるフリーマガジンなどでは解散した彼らのことが書かれていて気になっていたところにこのライブ、弾き語りとはいえ激しいものをやるのかと思っていたら、ゆっくりとビートルズの曲から。想像していたよりも甘く、優しげな歌声で、軽くやわらかに歌っているような印象を受けました。今までのライブでの彼の声を聞いていたなかったので比べようがないのですが、カバーの曲を演奏している時はどことなく余裕があるように見えて、そんな中、誰の曲だったのかアーティスト名を忘れてしまった「落とし穴の(以下失念)」というような曲が印象に残っています。最近やっと音源化されたと言っていたので聞きたいのですが、アーティスト名がさっぱり。確かやわらかいようでカタカナの四文字の名前だったような気がするものの、思い出せそうもなくて、セットリストがどこかで発表されると信じたいです。
最後は自身の曲を披露してくれて、がっと一気に体内温度が上がったような気がしました。曲に込めるエネルギーというか、伝えたい言葉を伝えたい本人が最初から最後まで扱っているからなのか、近藤さんの中にある激しさが直接伝わってくるようで、これを聞いてまた彼の弾き語りに行ってみたいという気になりました。


町田昌弘(from:100s)
まっちぃのキャラに対しては少し思うところがあって、今回弾き語りにあたってもどうだろう私は大丈夫なのだろうかと心配ではありました。でも、第一声を聞いてびっくり、意外や意外に好きな声で、力強いところよりも少し引いたような歌い方の部分が目を瞑りたくなるぐらい好みでした。ああ来て良かったと一曲目から思っていると、「高いから」と前置きをして中村一義の「永遠なるもの」を演奏してくれてにやり。続けざまに「セブンスター」も弾いて、やっぱり彼は100sのギターリストなんだなと思いながらも歌も良いなあという気持ちも抱いていました。他の曲は紹介していなかったので、ちょっと気になるものもあったのでまた聞いてみたくもなりました。
とにかく、今回のライブは贅沢すぎるほど贅沢で、町田さんの歌声が結構好きだということが判明したことが第一の収穫でした。最後は100sと同じく「バハハイ」でしめて、アンコールでまっちぃのみが再び「バハハイ」を歌って他の出演者は後ろで立って見守るというおかしな形になっていましたが、こんなに充実したライブを主催してくれて本当にありがとうという気持ちで精一杯拍手をしました。ライブが終わった後もお客さんときちんと向き合って話をしていて、素通りして帰ろうと思っていた私も思わず「歌声良かったです」と言ってしまうほど、魅力的な人でした。
またあの空間で静かに濃い時間を過ごしたいです。そして12月のポリシックスのチケットを店頭売りで手に入れて、自転車で家まで飛ばして空を見上げると月のそばにオレンジ色の星。金星だったかな、と思いながらキンモクセイのようだと石野田奈津代さんのことを思い出しました。