『http://www.aviva-movie.com/』

のっけから「まさか!」の事実。トッド・ソロンズ監督の作品は、やさしいだけじゃない世界をきちんと描いていて、目を背けたくなるようなえげつなさにも向き合っているところが好きだったのですが、最初のところで「やめてー!」と思ってしまいました。そして始まる物語。
今回の作品も変わった手法を取っていながらも根本のところは変わっていなくて、人間という存在を両面から描いていました。本人は良いことをしていると思っていても他人から見ればそれは悪だったり罪だったりして、その他人にとっての善も別人からすればまた悪だったりする。正直に生きたくても現実はそうもいかなくて、拒絶しても拒絶しても結局は受け入れるしかない。原題が回文という名前の通り、この作品はぐるりと回って同じところへ戻ってきて終わるようになっている。何かが変わっていても根本的には変わっていない、という終盤で出てきた科白が印象に残っています。回文といえば『アナとオットー』もそうですが、詩的で乾いたような印象を与える作品も好きですし、こちらのじめじめとねっとりとした作品も好きです。苦くて痛いけれど、でも決して人生をあきらめないアビバのように、様々な側面を見せながら私も生きていくのでしょう。
パンフレットの装丁も凝っているので、かわいいもの好きな方は手にとって楽しんでみてください。砂糖菓子のような甘い縁取りは、その中身にあるものを少し中和させているのかもしれません。