劇場で見たかったものの、いつの間にかDVD化されていて、近所のツタヤではいつでもレンタル中だったので仕事場近くのツタヤでやっと手にすることができました。原題が『蛮族の侵入』だと知って、題名によって作品の第一印象がこうまで変わるものなのかと驚きました。そしてこの映画の登場人物が、監督が以前撮った『アメリカ帝国の滅亡』という作品から引き継がれていることを知り、早くそちらを見てみたくもなりました。
死をテーマにした、いわゆる感動ものなのだろうな、という想像をしていたのですが、お涙ちょうだいのものではなく、原題に含められた問いかけも含まれていて、感動するのではなく淡々と描かれていく死への準備には、すんなりと受け入れられるものがありました。ただ監督が語っているように、この作品の死の描き方は理想であることも頭のどこかでわかっているので、すんなりすぎることに疑問を感じたりもしました。そしてこの作品は死を扱いながらもそこだけに絞るのではなく歴史や哲学やユーモアについてもふんだんに織り込んでいて、私にはまだ早すぎるような内容もあって、酸いも甘いもわかる年齢に達すればより一層深みが出てくるものなのだろうな、という印象を持ちました。
邪な私は、死を迎えようとしている人を見舞ってしばらく側にいてくれた友達が、いつ痺れを切らしてしまうのではないかとハラハラしてしまいました。非日常であるうちは良いけれど、それが日常に入りこんでしまった時、どのような対応をすれば良いのか、ということまで考えてしまったのですが、映画の中の見舞い人である彼らはやさしく死を迎える彼を見守っていたので変に安心してしまった部分もありました。
最後に大事なのは家族の愛情と友情、そして自分の死を自分で決められるということ。あまりにきれい過ぎると薄く感じてしまうのですが、現実を映しこみながら描かれていたので、苦さを味わいつつも奥深さを感じました。