東寺


一泊したホテルの近くにあったので、荷物を持ちながら東寺へ。昨日よりも外が暖かいことに安心しながらも、まだ咲き気味の桜を見てタイミングが合わないことにため息を一つつきました。
私が京都に初めて行ったのは修学旅行ではなく、大学に入ってからでした。それまで行きたいという気持ちはあったものの、実現化することはありませんでした。お寺や仏像に関しては、予備校で日本史の先生が仏像の美しさについて熱く熱く語っているのを見て「そんなものなのかなあ」と思う程度で、実際京都へ何回か足を運んでみて、その良さを少しずつわかってきたと思っていましたが、甘かったです。石庭はずっと好きでいますが、今回、この東寺で仏像の美しさに触れて震えてしまいました。
劣化を避けるためなのか、東寺の展示物は照明が薄くなっていて、中に入るととてもひんやりとしていました。そして立ち並ぶいくつもの観音様を見るうち、痺れてしまうものがありました。それは作品そのものというより、その後ろに映し出される影、でした。影、陰、蔭、翳。どの漢字が一番ふさわしいのかわかりませんが、ぼんやりと照らされた観音様の後ろにある影がとてもとても美しく、私はしばらくそこで立ち尽くしてしまいました。後光の部分の細かい作りまでも影は映し出されていて、顔はないのにそこにも表情が乗り移っているかのように見えました。
本当に美しいものは実物だけではなく、その影さえも美しいのだと知り、しばらく五重塔が見えるベンチで呆けてしまいました。