LOVE/HATE(初回)

LOVE/HATE(初回)

せっかく寒いので昨夜のことを思い返しつつ、アートの曲を色々と巡らせてみました。イヤフォンをしているので直接は聞こえませんが、枯れ葉を踏みしめたときの感触が何とも言えなくて、もろくなった骨が崩れさるようでした。かわいらしいので「SKIRT」聞きたかったなあと思いながら、雨に降られることなく朝の歩きは順調に進みました。
ダブルアンコールで演奏された「ニーナの為に」では木下さんが懸命に歌っている姿が印象的で、マイクスタンドの位置がうまく定まらなくても投げたりせずにきっちり歌い上げていた映像がまだ頭の中に残っています。そして照明が寒色系中心だったせいか、昨日からデレク・ジャーマンの『ブルー』を見たくなっているのですが、再び挑戦したとして最後まで見切れる自信がありません。夢うつつで見る極上のぜいたく、以前劇場でレイトか何かで上映するというとてもぜいたくすぎるイベントがあって、参加しようか迷ったものでした。うとうととしながら青い映像と解釈の出来ない言葉にひたされるのはたまらないものがあります。

幸福な食卓

幸福な食卓

既に借りている本があったというのに、見つけてしまって思わず左右を見回してカウンターへと向かってしまいました。登場人物がそれぞれに淡々としてつかめない感じではありながら、主人公の女の子が気づいていないことをそのまま描いているところが良かったです。体温を感じさせない文章かな、という印象を受けたのですが視線は冷たくもなく優しく見守っているものだったので、ふむふむと過度になりすぎず読み終えました。

短編の短編、ちらっとだけ読んだ作品に興味を引かれてしまったので五十音からはずれても読みたいものが出てきました。高校生用教材にも使われている横光利一さんの「蠅」*1葉山嘉樹さんの「セメント樽の中の手紙」*2という作品。もしかしたら過去に教材として読んでいたのかもしれませんが、まったくといって記憶に残っていなくて、今は何の枷もなく自由な解釈で読むことができたので素直に味わえました。
「蠅」は読みながら情景が自然と思い浮かんで、どこまでも突き放した視線が痛く、「セメント樽の中の手紙」は「私の恋人はセメントになりました。」という一文にぞくっとして現在ならば詩的に思えそうな部分であっても作品全体から漂うやりきれなさが一切のお洒落感を拒否していて、どうしようもないもどかしさを覚えてしまいました。近頃やわらかめな文章を読んでいただけに一言ひとことからにじむ感情が重く、どっぷりと読みたくなりました。

本当に本当に快適すぎて、自転車をこいでいたらこのままどこへだって行けるような気がしたのですが、どこにも行けないこともわかっていたので寒さに身を委ねて視界をクリアにさせて耳に痛みを走らせて少しの言葉遊びでお茶を濁しておきました。
片耳から流れてきた木下さんの「かげ」という言葉。そこから「影」ではなく「かげろう」を連想して、「陰」が入っているのに文字だと「陽炎」になって、「陽」という反対の意味合いの漢字が含まれているのは不思議でおもしろく、現象としての「陽炎」は暑い時期にゆらゆらとほのおのように立ちのぼるものではあるけれど、その幻は陰のように曖昧でもあって、冬の夜に想像をしようとしましたが何かが見えたらそれは単なる個人的な幻想なので、途中で遊びをやめておきました。

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