PaperBagLunchbox presents「メロウゴーラウンド vol.4」

どうなってしまうのか当日、その瞬間までわかりませんでした。とりあえずしわよせが来なかったため七時前に到着するとフロアでは恒松さんがDJ中で、個人のものやPBLの曲をリミックスしたものを流していました。適度な電子音で耳触りの良いものが多かったので、また聞きたいなと思いながら深呼吸。フロアもぱんぱんとまではいかなくとも、適度にお客さんが入っていました。
久しぶりにアンケート書こうかな、と思った時に限って入っていなかったので代わりにメモしておきます。


その一瞬、息を呑んだその一瞬。流れてきた一音は予想に反して、あるいはイメージからするとそれほど遠くない「夜明け」でした。はじまりを示すのならば「Acoustic Boat」か「メロウゴーラウンド」かなとも思っていたのでついニヤニヤしてしまって、本当に動き出した彼らを見守っていました。
それ以上でも以下でもない、ありのままの、等身大の彼らがそこにいました。今まで貯めてきたものが爆発するわけではなく、全然違う方向を指し示すのでもなく、低空飛行でも停滞でもない、助走する姿はとてもしなやかで、生まれ変わっていく過去の曲と初めて聞く曲たちとのいろどりの違いを味わいながら、演奏中に張られた糸の存在を感じました。MCになるとゆるやかになる空気、そして懐かしい音。
ずっとライブで聞きたいと待ち続けてきた曲は、彼らの描くスタンスが三人称になっても有効らしく、数年ぶりにやっと聞けた「藍時」が流れた瞬間、言いようのない感情がよみがえってきました。この曲は私にとって特別なのかもしれません。ただ、音に翻弄されて動揺してしまうかも、という心配はかつてよりもやわらかい音が打ち消してくれました。音にまみれても圧されてもその中に攻撃的な要素はうすくしかなく、突き刺すような鋭さはなかったです。安心しつつもちょっとだけ残念な気持ちになりました。それは彼らの奏でる音が優しさを帯びてきたからという理由もあるかもしれませんが、単純に聞く側である私が変わってしまったからというのもありそうです。
フロアを見ながら笑顔で叩くアイさん、ワンマンでもやっぱり背中で語る倉地さん、コーラスも多くなってきてより忙しそうな恒松さん、音に有り余るほどの感情を込める中野さん。四人はアンバランスだからこそ成立しているようで、あたたかくなった曲たちをいとおしいとさえ感じました。
アンコールでまたひとつ熱気が上がって、高揚感がわきあがってきたのは中野さんがハンドマイクになって舞うように歌い出したからなのかもしれません。もがいてもがいてもがいて苦しんでいる、飢餓のある叫びの曲をもっと聞きたいという気持ちもありますが、今は体温が感じられるようなやわらかいものの方が落ち着いて聞いていられるようです。どちらもソフトになっていたため「藍時」と「おやすみ」の北風と太陽轟音対決を見られませんでしたが、「おやすみ」で閉じられた世界は優しさに満ちていて、張っていた糸もいつの間にゆるやかになっていました。

これから、ここからどう変わっていくのかわかりませんが、現在のPBLそのものであるワンマンを今、見られたのは幸運でした。