峠。
夕焼けが終末観に満ち溢れていました。乗り換えの駅で立ち止まって、最寄駅のホームで立ち止まって、駅を出てから立ち止まって、駐輪場を出てからも歩いて空を見て、刻々と染まる場所が変わっていく雲を見つめてしまいました。青く蒼く碧い空と反対に赤く紅く朱い雲のコントラストに魅せられて胸がいっぱいになったり締め付けられたりして、この世界をどこかで感じたことがある、と思った瞬間に浮かんだのはアナログの「夕暮れ」でした。わかってしまったら逃れようがなくて、蝉の鳴き声がサイレンのように聞こえてきてせまってきて、夕暮れのイメージが現実の情景と重なって、振り切るためにペダルを強く踏み込みました。意識しないでおこうと思ったのに、無意識がそれを許してくれないようです。