オードリーシューズ presents「オードリーのプレゼントvol.2」

新宿NINE SPICESへ行くのは初めてだったのですが、七時半開演なので大丈夫と伊勢丹で買い物をしていたら少し迷ってやっとのことで到着、新しいところなのでどこもきれいでした。ライブハウスがいくつか提携してドリンクのスタンプカードを作っていて、そういうサービスは良くライブに行く人にとってはありがたい特典かもしれません。ちなみにドリンクはきちんとグラスで提供してくれて、種類も豊富でした。
ふわふわの夜は、フロアの人はまばらという状態からのスタートでした。


PaperBagLunchbox
ほのかな光がはだか電球のものなのか蛍光灯のものなのか、光から伝わってくる熱は手のひらのあたたかさと似ていたのかもしれません。久しぶりに見た彼らは人間味を帯びていました。これまでは刹那的切なさを断片的に切りとっていたような印象があったのですが、今は何かへ変わろうとしている過程を、流れごと描こうとしているかのようでした。停滞しているイメージはなくて、光と闇のバランスが三・七から六・四に逆転していました。初めて聞く曲も多かったせいかイメージの変わった彼らに戸惑ってしまう部分もありましたが、明るすぎて目がくらむというほどではなく、今まで薄暗いところをさまよっていたからまだ光に慣れていなくて周囲の風景がよく見渡せていないのかもしれません。
まだ今は曲の骨格を作り上げている状態なのか、コーラスはあるものの音でたくさん飾ったりすることはせず、これからどんな風に味付けされて変わっていくのか楽しみではあります。全体的にとげとげしさがなくなって歌詞も直接的な表現が多いような気がして、身近になった分彼らの持ち味が減ってしまったかなあという横柄なことを思ったりしましたが、何とかしようともがき苦しんでいるところから抜け出しつつあるのがうらやましいだけなのかもしれません。胸を鷲づかみにされるほど動揺することはありませんでしたが、影から光へと向かっていく彼らの背中越しに何か見えそうな気がするので、変わってしまったなあと悲観したりはしません。
ふわふわしていて実体がつかめなかったのが、今は肉体的にそこにきちんと存在している、とわかるむきだしの部分も表現するようになって、次はそこにまやかしが入ってくると気持ち悪い気持ちよさが出てきそうです。PBLのライブを見たあとは心ここにあらず状態になってしまうのですが今回は三組ともイメージをくすぐってくれる人たちだったのであちこちと頭の中の映像を混ぜながら楽しむことができました。こうやって今思い返しても、抽象的ながら言葉やイメージが浮かんでくることに感謝しています。ちなみに、NINE SPICESのステージのせいか立ち位置が変わって中野さんが左側に行き、中央には誰もいなくなっていました。


トレモロイド
「隠せない明日を連れて」が入場SEだとやっぱりそちらに意識を持っていかれてしまいます。主にベースラインというのは仕方ありません。
彼らもPBLと同じぐらいひさしぶりなのにひさしぶりな気がしないのは、世界がつづいているから? 音色がたくさんあるのでとっちらかっちゃうかなと思ったら、ライブだとドラムが良く響いてきて強引にでもまとめあげている印象でした。それぞれが曲の世界に没頭していてちぐはぐになりそうなところを、力強いリズムで一つの鼓動としているような感じ。鍵盤の音や繊細なギター、ささやかに聞こえてもラインをしっかりささえているベースやイメージの膨らむ歌詞に意識が向かいがちですが、両手を広げてそれらすべてを受け止めているドラムに今回はひきよせられてしまいました。強くても邪魔するわけではないそのリズムはライブならではの特典かもしれません。
6連続新曲リリースという企画をやっているらしく、その中で披露された最後の「April has gone」という曲ではボーカルの陽介さんが鍵盤を弾いて、鍵盤の郁太さんは場所を移動して床に鍵盤直置きというおもしろい配置となっていたのですが、聞いていてイメージがふくらむような内容でした。歌詞をきちんと聞き取ることができなかったので後で音源を買おうと思っていたのにすっかり忘れてしまったのですが、期待と不安の入り混じったような割り切れないものが描かれていて、余韻が残るものだったのでまた聞きたいです。
アンケートにあった、トレモロイドの曲を一言で表すと? というような問について、今回思い浮かんだ言葉は「隙間」でした。ニッチ的な意味合いではなく、単純に言葉そのままの「隙間」。余韻をひきずって次のオードリーシューズの「風船の降りる場所」という曲を聞いている時に、「風船」という単語にトレモロイドが結びついて一つの情景が頭に浮かびました。
風船をとろうして飛び上がっている、あるいは単に飛ぼうとしてジャンプして片手を天にのばしていて、それに対して片足はひもにつながれている。ひもは地面の下にも続いていて、その先にある丸いものは風船か鉛かわからない。重力に引っ張られているのか地面の裏側へ浮かぼうとしているのか、何にとらわれているけれど足は空に浮かんでいる。宙ぶらりんの中でのバランス。絵心がないのでその情景を上手く表現できないのが非常にもどかしいのですが、空から降りてくるアルバムのジャケットとは反対のイメージかもしれません。後から思えば、夢見がちでぽわーんと浮き足立っているところに重力で現実を知らせてくれたのは力強いドラムの音があってこそ、なのかもしれないなという結論に行き着きました。
6/17のシキサイばけつというイベントにはヒダリやウミネコサンライズも出るので鼻息荒く臨みたいものの、行けるかどうかはカオスっぷりに左右されそうです。


オードリーシューズ
やっとライブを見られた、とありがたい気持ちになりながらも実はどういう編成なのかよくわかっていなかったので、メカネロのドラムの方がボーカルを取っていることに今さらながら気がつきました。ステージの前の方までドラムセットがせりだして、奥にサポートの方の鍵盤、左右にベースとギターという配置でした。ちなみにギターの方は杏霧虫というバンドをやっているようで、試聴してみたらほどよいポップさで心地良かったです。
オードリーシューズの曲はメカネロの流れをくんでいるなと感じるところもあったのですが、歌声がたくましくなっていたので曲から受ける印象も多少違っていました。女の子のやわらかさや少女っぽい気まぐれに振り回されるようなものから年を重ねて少し大人びた感じ。ドラムを叩きながら歌っているので躍動感があって、ポップではあるけれどアンダーグラウンドなにおいも感じました。まだ完全にかたまりきっていない感じもあるので、きっちりとしたコンセプトを持ちながら作り上げられていく世界をもっと見たくなりました。
ふわふわの夜にぴったりのイベント、見たい人たちを集めてくれて、企画してくれてありがとう! と彼らにお礼を言いたいです。


頭の中にイメージや言葉がわきすぎて収拾つかなくなってしまいましたが、せっかく浮かんだものをそのまま忘れてしまうのはもったいないので躍起になってメモしました。ライブの内容についてのメモからは離れてしまいましたが、こういうことがあるからライブは良いな、と再確認できたのでそれも含めて記しておくことにしました。