Syrup16g presents 「UP TO THE WORLD#3」

感覚がもったいないような気がしたので、音楽は聞かずにためておいたpodcastで我慢我慢。地方であの曲をやったという話を聞いて恵比寿のスチャダラが気になりつつも六時ぎりぎりに到着すると、拍手が聞こえて大急ぎでフロアに入りました。この瞬間を見逃すわけには行かない、とドキドキが止まらなかったのですが、意外や意外な順番でした。


Good Dog Happy Men
ドラムセットが二つ見えて最初だということにまずはびっくり。段々と世界に誘い込まれながら、ステージ全体を見るとやっぱりバランスが良いなあ、と感じてしまいました。センターで飄々とした雰囲気を漂わせながらもどこかあたたかいものをにじませて、でも絶対に触れさせない部分もあるのだろうなあという印象を受ける門田さん、首を振って全身を使いながらエネルギッシュに叩く内田さん、様々な打楽器を使いながら軸はぶれずにリズムをそろえていく伊藤さん、左右二人の視線と二つのリズムを繋げていきながらステージをまとめあげているように支える韮澤さん、四人とも楽しそうに演奏していて、音が跳ねる感じがしました。そして今日も凝視してしまったのは、スティックをタクトのように振るって叩く伊藤さんの姿で、今度はSAKEでも見たくなりました。二人だけがステージに残ってリズム合戦になって終わる曲は聞けませんでしたが、大きなステージで見られて良かったです。


PaperBagLunchbox
並ではない心拍数の速さ、期待と心配と不安とがごちゃまぜになって、彼らのことを昔から知っているわけでもないのに、ライブ後の可能性についていくつも考えてしまってこんがらがって、現実が想像へと追いついたのでした。
大舞台でもあるしこれは記録しておかないと、と強く思ったのでほとんど印象でしかありませんが曲名も含め記しておきます。
聞こえてきたイントロは「スライド」、中野さんの声の出具合が心配になったのですが、すっと入り込んで寄り添って、客観的にステージを見ながらも早速心はひきつけられてしまいました。音が割とやわらかめだったので、ああ優しい日なのだなと安心と不安がこれまた沸いてきてしまいました。ステージ上も気にはなりつつやはりフロアの様子も気になってしまったのですが、「スライド」が終わった後の一瞬の静寂には思わず息を呑んでしまいました。圧倒されているのか戸惑っているのか拒絶されているのか、お客さんは動かず、動けずその場にいるようでした。
次は確か久しぶりに聞けた「ふらつく夜の」でポップ目な曲が続いたので「オレンジ」で締めるのかなと想像していたら、三曲目はサポートギターを入れて「五度」でした。二三曲目は逆かもしれませんが、サポートを入れた状態で見るのが初めてだったので新鮮な気持ちにもなりました。その分中野さんが自由にステージを動き回っていて、大きな空間を楽しんでいるように見えました。
ラストは「アコースティックボートの上」(→正しくは「acoustic boat」でした)、リズムが途中で変わってぐわっと音がせめてくるところやその後の静寂がたまらないのですが、それがAXで聞けるとは思っていなかったので聞きながらにやにや、心はドキドキと忙しかったです。中野さんがマイクを持ってステージ端まで来て四人が四角形のようになっているのもいつもと同じだったのでちょっと一安心。舟に乗って帆先に中野さんが立って航海へとこぎだすかのようなイメージで、マイクスタンドのある位置にスポットライトが当たっているのにそこには誰もいなかったのがとても印象的でした。
体調が芳しくないらしいので心配だったドラムのアイさんは乱れることなく、でもぐねんぐねんとおどろおどろしいところまで行くことはなく、彼女が叩いているせいなのか今日は曲に少年少女っぽさだけではなく母性を感じました。倉地さんは変わらず背中で語ってベースを弾いていて、恒松さんは何か仕掛けてくるのかなあと思っていたのですが激しすぎる音を出すことなく制御してポップさをかもしだしていました。
そしてAXは照明がきれいなので期待していたところ、青系統でまとめられたライトアップがされていて、曲に合わせて表情が見えないようになっているものも多く、これはまた見たい、と思ってしまいました。
いっそのこと二曲ぐらいにして、せっかくのAXだから「藍時」で轟音で爆音でぐっちゃぐちゃに掻き乱して欲しいな、という気持ちもあったのですが、ここからステップを踏んでいくのだろうな、という軽く見える身のこなしで「こんなんですよー」とダイジェスト的に紹介されているようでした。お客さんは終始戸惑っている感じだったのですが、気に入った人も確実にいると思うので、次につながっていくと良いな、と思いながらまだ速いままの心拍数をかかえて大きく深呼吸しました。次は野音など野外で音が反響するのではなく吸い込まれていく世界を味わってみたいです。


Syrup16g
彼らがとても愛されているのだな、ということがよくわかりました。フロアからわきあがってくる熱が半端ではなくて、それまで静かだったのが嘘のように手が挙がって揺れて、突き刺さる視線の痛さまでも感じてしまいそうでした。最初が新曲だったので、このまま全部新曲が続くのかなと思っていたのですが、三曲目からは知っている音が流れてきました。「ex.人間」の前ではコーラスの練習があったり、どの曲か忘れましたが最初とちってやりなおしたり、大丈夫だろうかと五十嵐さんのことが心配に。ライブというよりこれは集会になっていやしないか、と色々感じたりもしましたが、左足がそこそこ上がっていたので見ない振りをしておきました。いた場所のせいなのか、あるいは五十嵐さんの声のせいなのか歌詞がまったく聞き取れなかったのが残念。そして今日も今日とて視線の先にはベースのキタダさんの指があって、あの指さばきとあくまでマイペースな姿にひきつけられてしまいました。
アンコールでは思いきりはじけて登場する五十嵐さんを見られたのですが、心の中ではPBLのことで占められてしまったので記憶も気持ちもふわふわしてしまいました。四月のシロップワンマン、東京が初日なので追加があったりするのかな、と期待してしまうのは無謀なのでしょうか。


シロップのイベントにPBL!と衝撃の事実にびっくりしたのはもう先週の出来事。今回の出演者は三組とも陰がありながらそれぞれ違った世界観を持っていて、聞くだけではなく見る楽しさもあったので照明の凝ったAXで見られるのはとてもありがたいことではあったのですが、個人的にはシロップ好きの方々にPBLがどうとらえられるのかということが気になってしまって、陰は陰でもベクトルが全然別だと思っていたので思いきり緊張してしまいました。やっぱり比べられてしまうのだろうか、と心配だったりもします。大きなステージで見られたのは良かったのですが、ぜいたくを言えば数百人範囲でしか聞いたことのなかった「藍時」を閉じ込められたように大きな場所で味わってみたかったです。でもまあそれは、今後を楽しみにするということでこれから仕事に取りかかることにします。