LIQUIDROOM 2nd ANNIVERSARY liquid surprise 02 (スチャダラパー / ゆらゆら帝国)

AM 8:30まではお世話になりすぎているスペシャさんから来た招待メールによって、メカネロのワンマンに行く気まんまんでした。招待客が多いから2ドリンクせいになったのかな、でも映画一本分だと思えば良いのか、などと考えながら今週のスケジュールを頭の中でさらっていると、9月末にあるはずのライブにまだ行っていないと気がついて、あれ、あれと冷や汗が。しかもスケジュールを入力していなかったので、もし終わっていたらどうしようと焦りながら携帯で調べてみると、そのライブは何の因果か今日! 始まる前に気が付けたのは幸運ですが、次の駅でいったん降りて引き返して、雨の中自転車こいでチケットを無事持って再び出かけてひやひやでした。
なんだこの組み合わせ、私に来いっていう遠まわしの誘いなのか! と知ったときには大興奮。両方ともライブを見たかっただけにわっくわくで待っていた、はずなのですが高揚感だけ抱いて肝心の日程を忘れるという行動をとったことは反省しています。
六時半開場七時半開演、七時過ぎに入ったらフロアがガラガラ、周囲の椅子や奥の段のスペースから先に埋まっていました。年齢層も少し高く、Tシャツはゆら帝の方が多かったので最初がスチャダラかもしれない、とあたりをつけながら少しずつ埋まっていく様子を静かに見守りました。


スチャダラパー
まさかここまで、と思うぐらいゆら帝のお客さんが多くて、盛り上がりがかなり微妙な感じになっていましたが、それさえ楽しんでいるようでMCは相変わらず冴えていました。みんなゆらゆら帝国見に来たんでしょ、円と円で重なる人って(おそらくベン図のこと)あんまりいないでしょ。だから今日はその重なる部分を増やすためにやろうと思います、というようなことを一曲目後にボーズさんが言っていました。今回もロボ宙さんが一緒に歌っていて、ライムの応酬と終始お客さんのご機嫌をうかがう感じに思わずにやにや。
曲は11月に出るアルバムからの新曲と、「The 9th Sense」からのものが多かったです。聞きたかった「Yes / No」も「Shadows Of The Empire」も歌ってくれたのでとりあえずは満足。「Shadows〜」の方はあのイントロもきっちり流してくれたのでがっしとつかまれました。ただ今回はかけられるトラックの数が少なかったのかインパクトのある音が少なかったのか、リズムばかりが聞こえてラップとちぐはぐな印象を受けてしまうところが多くて、CDと違うのは当たり前なのですが、フロアの様子を見ながら心配にもなってしまいました。お客さんは盛り上がってなくてやり辛そうではありましたが、お客さんも冷たいわけではなくて、ただどうすれば良いのか戸惑っているように見えました。コール&レスポンスで客席から声が発されてちょっと安心。
新曲のサビで「夢は金持ち 夢は金持ち 一日五回 夢は金持ち」と歌っていて、ああこの人たちやっぱり好きだ、とくだらないのに真摯さを持ち合わせている歌詞を聞き取ろうと躍起になってしまいました。そしてスライマングースの「DEFENSELESS CITY」も歌ってくれて、こちらもリズム音ばかりが耳から入ってきて色が少なくて、ベースが響いてこないので物足りないなあと思っていたのですが、MCにてハナちゃんこと笹沼さんのことが出てきて、いつもは一緒にやってるんだけど予定が合わなくて来られなかった、とのこと。ああ予定があっていたらここで笹沼さんのベースが聞けたかもしれないんだ、ともしもの空想が危うく始まってしまうところでした。
ぬるま湯が心地良くてずっと浸かっていたら、皮膚がふやけて指の皮がむけてしまったり、なんだかちくちくすると思っていたらクラゲにさされていたりするような音楽。どこかシニカルなのに毒々しすぎないところが良くて、今度はもう少し盛り上がる中で聞きたいです。


ゆらゆら帝国
ライブを見たのは02年のライジングサンで、サンステージにて転んだりギターの弦が切れたりしていた、という記憶しか残っていませんでした。曲については本当におぼろげだったので、音源を聞くよりライブを見てみようという魂胆を持ってしまって、レンタルしても聞くのは我慢していました。
飲み込まれるのではなく吸い込まれるのでもなく、静かに沈められていくような感覚。硬質なのに声に哀愁が少し混ざっていて、無機質かと思いきや揺れる音に人間味を感じたりしました。最初はぬるいかな、ちょっと冷たいかなと思っていた水が次第に温度を上げていて、でもぐつぐつと煮え立つくらいに沸騰はしていなくて、こぽこぽと泡が出てくるぐらいのもの、という印象でした。音に包まれるのではなく、ひたされていく。地面が底なし沼のようになっていて、気づいた時には身動きがとれなくなってしまっているような世界。じわじわと染み込んできて、立つのがつらくなっても座ることも浮かぶこともできない、宙ぶらりんな気持ちになりました。
最初は音がこもりぎみだったのか全体的、特にベースの音が聞き取りにくかったのですが、こぶしが挙がったりする割とポップっぽい曲から後半は段々と轟音になっていく曲が入っていったりして、あまり気にならなくなりました。ドラムのセットもおもしろく、柴田さんが叩いているその姿に表情があってついつい見てしまいました。轟音になってもいきなりではないので耳が痛くなることはなくて、不協和音にはならなかったので不快にも不安にもならず、自分のすぐそばを台風が通り抜けていくような気がしました。
何回も見ている人たちの話をちらっと聞いたところ、前半のノリで行ったらどうしようかと思っていたら後半ガラッと変わって安心した、とのことで、普段のライブは後半に近いものなのかもしれません。MCは一切なしと言っても良いぐらいで、最初はダイバーが出ていたものの最後の方では踊ったりするのではなく音に翻弄されているようで、その姿を後ろから見るのも味がありました。すぱっとやり切ってアンコールなしなのも格好良かったです。今年もライジングサンで見ておけば良かったなあ。


この組み合わせで果たして良かったのだろうかとお客さんの偏りっぷりに不安にもなりましたが、両方見たかったので満足しています。ベン図の共通部分が広がっていることを祈って、スチャダラのアルバムを待つとしましょうか。