アナログフィッシュ2006「ナツフィッシュ ハジマリッ!」

録画予約を忘れたと気づいたのが駅、この前の543リピートで録画したらまたしても黒画面で音声のみという失態を考えると妙な焦らしに耐える必要がなくなったと発想の転換をして、クアトロへ。夏休みに入ったせいか渋谷は妙な高揚感にくるまれているようで、俯瞰しそうになった気持ちを抑えて早歩きしました。


このふくらんでくる気持ちは何なのだろうか、と三人から発されるエネルギーを受け取って自分の中に芽生えていくものに対して考えてしまいました。新曲ラッシュ、でも初めて聞いたものでもすんなりと受け入れられて、改めて斉藤さんの叩く姿が好きだなあと思いながらステージ上を見つめていました。
激しすぎるわけでも穏やかすぎるわけでもない、平熱のようなもの。よくわからない気持ちがもやもやとあって、それは決して悪い意味合いのものではなくて、名付けられないけれどそのままにしておこうかなと思っていたら、「Living in the City」が流れてきて、音源で聞く以上にぴったりときてしまって泣きそうになってしまいました。日常を受容すること、生きるということ、なんだろう、下岡さんの声とそこに重なる楽器の音がダイレクトに響いてきてしまって、感動的なメッセージがあるわけでも鬱屈したものを訴えているわけでもないのに、抱えていたよくわからない気持ちをすくってくれるような気がしました。曲名を忘れてしまったのですが、サビ部分でI miss you〜と歌っていたものも下岡さんの風景の切り取り方が好きだなあと思えるもので、言葉とともに流れていく景色と思いの移り変わりまでもが込められているようで、もっときちんと聞いてみたくなりました。そして「バタフライ」はAXで初めて聞いて見事にぐらっときてしまった曲だったので、今回もそのうねりに飲み込まれながらよくわからない気持ちと同化していました。
佐々木さんはシーチキンの代わりと言ってオリーブオイルを直飲みしたので驚きましたが、弾き語りでは彼の持つ声の良さが響いてきて、「ナイトライダー」はギターと上手く調和して違和感なく曲の世界に入り込んでいました。確か「レディ ステディ ゴー」という曲では渋谷のスクランブル交差点のことについて歌っていて、交差点をわたらずに引き返してしまった、というような表現に数十分前の自分を重ねてしまいました。彼の持つパワーはとても純粋で愛らしくて、男らしいのにピンクがかっているようなイメージがあります。
本編最後の「夕暮れ」、たぶんこの曲を生で聞いたのは初めてで、ロックイズハーモニーと言う通り綺麗なコーラスとオレンジを基調とした照明の美しさにハッと息を呑んでしまって、曲が展開されていくのにしばらく立ち尽くしていました。何度か鳥肌が立ってしまって、どうしようかと戸惑ってしまうほど。
アンコールを求める平坦な「聞かせてよミュージック」に対して二度目には即興でちょっと演奏してお客さんと一体化してみたり、楽しいなあと思っていたら最後は「シムシティ」、せっかく定まりかけた気持ちがまたふらふらとしてしまって、最近住むということについて考えたりしていたので、余計に乱されてしまいました。


私は後ろの方でいっせいに挙がる手や楽しそうにしている人たちのことを見ていたのですが、前の方の段で見ていた綺麗な女の人が、最初の「アンセム」から満面の笑みでステージ上を見つめていて口も大きくあけて歌っていたようで、彼女のことがなぜだか気になって仕方がありませんでした。本当に嬉しそうだったのでその愛情がこちらまで伝わってきそうだったのですが、盛り上がっている「BGM」では口ずさむことも身体を揺らすこともせず真剣に見ていたり、微動だにしない曲もあったりして、今彼女の内面では何が起こっているのだろうかと考えてしまいました。ステージ上の三人と彼女と、四人の様子をうかがっている状態。けれど最後の曲が終わった時にちらりと横目で見た彼女が笑顔だったのでなぜだか安心しました。


ロッキンオンはアロウズと被っているので厳しいですが、ライジングサンでは今のところ見られそうなので、野外で彼らの曲がどう響くのか、楽しみでなりません。普段住んでいる土地から離れて聞く「まち」の歌は、どうなっているのでしょうか。