フジファブリック「MONONOKE JACARANDA TOUR」

お風呂に入る前に素直な感想を。
すごかった。初日と全然違っていて、成長というものをまざまざと見せつけられた気がした。あまりの引き込まれように嫉妬さえした。降りる駅を間違えて改札のところまで気がつかないぐらい動揺が身体全体を支配していた。
同じ年齢であるということもあって、彼らのライブを見るといつも「楽しい」という感情だけではないものを抱かされる。だからこそ惹かれるし、足元を見る覚悟をさせられる。揺れる原因はわかっているけれど、ちょっと泣きたくなってしまった。


やわらかな感想は、お風呂で気持ちを溶かした後に。
そして以下、溶かしたものを書くはずが自分語りとなってしまいました。レポというよりも感情描写です。
今回はちゃんと全体を見ようと思っていたので、前でジャンプして激しく盛り上がる人たちと後ろで腕を組みながら見る人たちとの中間に立ってゆらゆらとステージ上を見つめていました。それぞれの演奏や表情をつかむというよりも、全体を見ていたように思います。
たぶん私が「すごい」と思ってしまったのは、曲順と照明なのでしょう。序盤から心を揺さぶられてしまって、奇妙なうねりに早速飲み込まれてしまって逃れられなくなってしまいました。初日には願っても聞けなかった「蜃気楼」ではイントロを聞いた瞬間に全身鳥肌が立ってしまい、その後何度も何度も粟立って、最後のギターまで不協和音だったのはわざとなのかどうか疑問ではありますが、完全に引き込まれていました。
前回*1は新しい曲が演奏されることが嬉しくて、でもまだ馴染んでいなくてちぐはぐな印象を受けましたが、ツアーという名の出張に行って帰ってきたら新しいアルバムの曲も今までのものと同じように素直に受け入れることができました。けれど、やっぱり、昔の曲が流れてきて、しかもアレンジが加えてあったりすると気持ちが揺らいでしまいました。
初めて行ったフジのライブで披露された新曲を聞いた時、ポップすぎて受け付けがたくありました。他の方も同じような感想を抱いたと知って安心しつつも、インタビューを読んで、彼なりの冒険であったことを知り、ライブで見るうちにさほど気にならなくなっていました。それが今やキラーチューンとなりつつある「虹」という曲。今回のライブで最後の方まで演奏されていなくて、ラストが「虹」だったらどうしようという気持ちがありました。一回目のアンコールで「線香花火」が披露されて思わずニヤリとしてしまいつつ、不安がじわりと浸透してもいました。
ノリノリでも冷静でもない中途半端な位置に立って、個人個人の演奏よりもフジファブリックというバンドを見ているような気がして、そんな彼らが最後に演奏するのが「虹」だったら、私が惹かれる部分とは違うところへ行ってしまうのだろうな、と悲しい気持ちになって、事実ダブルアンコールで「虹」のカウントが始まった瞬間、奇妙な脱力感に襲われました。もう曲が終わる、とステージ上の五人を見ていると、繋いでそのまま始まったのが、アンコールで「NAGISAにて」と同じぐらい聞きたかった妄想ソング、「花屋の娘」でした。ああ、と別の脱力感が生まれてしまい、この曲で終わってくれることが嬉しくもあり、それも想定されていたようで悔しくもあり、初日に密かに抱いていた消化不良な気持ちが解消されてしまって、だからこそ余計に「成長」がうらやましくなりました。数ヶ月前と自分は何も変わっていなくて、それだけの時間があれば人はあれだけ成長できるのだと知ってしまったから、妙な焦燥感をまたしても抱いてしまいました。
もう少し若かったのなら素直に好きでいられたのでしょうし、年をとっていたのならわかった上で受け入れられていたことを考えると出会う時期を間違ってしまったのかもしれませんが、同世代だからこそこんな気持ちを抱けるのだし、これもまた過程の一つだと捉えて動揺する自分も記録しておこうと思います。


さて、自分語りはさておいてその他のメモ。やっぱりAXは照明がとても凝っていて笑ってしまう演出もありましたが、曲によく合った色合いと強さとタイミングでした。「Birthday」では最初一人でアコギを演奏する志村さんが「ラブリー」をちらっと歌ったところにもまた、最近起こりつつあるオザケンブームを感じました。それと、見た位置が狭間だったせいか割とスペースを持っていられたので、全体を把握したい時は今度からあのあたりにさまようことにします。チケ売り切れでしたが十二分に余裕はありました。あとはもう、疲れてしまったので他の方のを読んで感傷にひたることにします。
次は野音、似合わなさすぎてまだ早すぎるという意識がありますが、今日のライブを見せられてしまっては、楽しみにしない他ありません。


(ちょっとしたネタばらし)
虹を見て感じたとは事実ですが、数日前にあまり読んだことのないロッキンオンを見てみたら読者レビューが載っていて、それがあまりにも切実だったので、今回のことを書いたらこんな風になるだろうなあと考えながら文章を組み立てました。思春期ってこんな感じだったでしょうか。