おさむショー「2人ぼっち」

鈴木おさむさんがサイトでベタだと言っていた通り、ストーリーはいたってオーソドックスなものでした。けれどあえて王道を選んでいて、それで観客を泣かせることができるのですから、脚本にも力があるし、演じていた家城さんと金成さんにも相当な努力があったのでしょう。
話の展開もリバース再生ということでラストから見せていって、最後に再びファーストシーンと同じものを見せることによって感情を揺さぶらせるものになっていました。ギターを持って金成さんが歌うところ、最初は音程が外れぎみだったのが、最後では同じシーンのはずなのに上手になっていてしかもかすれ気味になって感情が入り込んでいるところを聞いてぐっとはきました。笑えるし泣けるし、話もきちんとしている。けれどやっぱりひねくれものの私は素直すぎる話には涙を流すことができませんでした。
二人芝居だったので五役を演じていた家城さんの衣装替えが大層大変そうでしたが、女の人の役はどれも衣装が似合っていて綺麗で、所作が本物の女の人のようにも見えました。中でも一番のお気に入りは、風俗嬢のカエラちゃんでした。シーンとしてもカエラちゃんのところが好きで、その中のやりとりでラーメンズという単語が出てきてびっくりしながらも、そこからぐぐっと話に引き込まれていったと思います。
だんだんと紐解かれていって、予想を裏切ることのない展開で、ラストに向かうにつれて周囲からは鼻をすする音が聞こえてきました。ひねくれすぎている私は素直に受け入れることが恥ずかしいのか、スクリーンに映し出される直球の言葉に感情を揺らめかせることができませんでした。でも、花子さんがファーストラブに乗せて踊っている姿を見たいと思っていたところで最後に彼女の踊りを見られたので、ひらひらと舞ってくる紙ふぶきが蝶にも見えて幻想的で、ゆらゆらと心の中でうごめくものがありました。
人を感動させるってどういうことだろう、笑わせることや泣かせることってどういう仕組みなのだろう。ストーリー中なのについ考えてしまうのは悪い癖なのかもしれません。ラーメンズの小林さんプロデュース作品を見ていても同じようなことを考えてしまい、帰りの電車で悶々としてしまったりもしたので、邪念を消して素直に世界に入りこめるようになりたいです。考えるのは後で良い、まずはそれを受け止めてから感情を素直に動かしていきたいです。
何にしろ、今回のおさむショーも楽しむことができました。次回のチケットも早速買ったので、七月が待ち遠しいです。