本作品の題名となっている彼女が起こした事件をもとに作られた『モンスター』(asin:B0002U8NS4)という作品は、予告編を見た時から泣きそうで、実際本編を見て最後の方はとめどなく涙を流していました。当然映画には脚色が加えられていますが、実在したアイリーン*1という人がどんな風だったのか気になっていたので、本物の彼女を見てみたら、映画においてアイリーンを演じたシャーリーズ・セロンの風貌と本当にそっくりで驚きました。
死刑を待つ内、現実に耐え切れなくなったのか妄想が彼女を蝕んでいっているのに、その発言は精神鑑定では異常と取られず刑は執行。七人もの男性を殺したアイリーンの発言は、ころころと変わっていき、最後の最後まで真実が語られることなく人生が閉じられてしまいました。映像の中で真実を語るという彼女の表情は真にせまっていて、どれもが本当の話のように聞こえてしまいました。乗り出して話をする彼女の目がまばたきをほとんどせず、真っ黒な瞳と白い眼球が飛び出そうなぐらい大きく開いているところが今もまだ頭に残っています。
彼女を取り巻く人々は他人よりも自分が大事で、保身に走る様が映像としてはっきり残っています。演技ではなく本物のドキュメンタリーなので、人間のどす黒い部分が浮き彫りになっていました。政治、報道、死刑制度、家庭環境。さまざまな問題がこの作品には含まれていて、死刑執行前に唯一取材を許されたのは監督が本気で彼女と向き合っていたからこそで、檻の中にいて取材される側であるアイリーンも笑顔を向けて話し掛けたりもしたのでしょう。監督に語った中のどれかが真実、と私は思いたいです。
日本では公開されていない、「セリング・オブ・シリアル・キラー」の方も見てみたくなりました。