「ETV特集 あなたの日本語磨いてますか」(→)

新聞のラテ欄を見た時から気になっていた番組で、その期待にかなうぐらい充実したものを提供してくれました。三つの対談それぞれに興味深いものがあって、様々な角度で日本語が語られていたのですが、最後の平田オリザさんと資生堂の社長さんとの対談で、女の人が上司で異性の部下に命令する場合、今はきつい口調になってしまうか子供に呼びかけるようになってしまうのは今までそういう文化がなかったのだから言葉ができていないのも仕方がない、というようなことを言っていたのが非常に関心しました。必要があるからこそ言葉も変わってつくられていく、ということでした。
最初の島田雅彦さんと美輪明弘さんの対談では壊れていく言葉や昔から持っている日本語の美しさやその重みについて語っていて、例えば「いじめ」という言葉がその本来の行動の意味を軽くしてしまっていると指摘していました。万引きも泥棒と言えば重さがわかるのに、万引きという言葉から受ける響きではかわいいものだという印象を与えてしまう、というのには確かに納得です。
外国に住みながら作家活動をしている多和田葉子さんと伊藤比呂美さんは外から見た日本語について語っていて、ドイツ語でも小説を書いて賞も獲っている多和田葉子さんの書いた「かける」という表現を使った文章が古風なラップとでも言うのでしょうか、アイロンをかける、鍵をかける、でかける、文章をかける。耳に入ってくるリズムが心地よくてとても印象に残っています。