知り合いの演劇というかイベントというか、ジャンル分けしにくいものを見に行ってきました。前回はチケ置きや前売りをしていたのに、今回は完全予約招待制で予約する時に住所氏名を告げて自宅に送られてくるというシステムでした。しかも会場名は伏せられていて、地図しか載っていない状況で、残念ながらそこがどこかわかってしまった私は1つの楽しみを失っていたのかもしれません。渋谷の結構大きめなクラブを借りきってのイベント。チケ代もかなり良心的な価格で、入り口でCDまで配布していて当人たちがいかに身を切っているかがわかりました。でもそのエネルギーがとてもうらやましかったです。
座席を作るのかと思いきや、会場内ではDJが既にプレイをしていて、ミラーボールもゆるくまわっている状態。お客さんは当然オールスタンディングで、ターンテーブルがあるところは多少高くなっているけれど、あまり見えにくく、なんとなく芝居がどこで行なわれるのかわかりました。来るまで会場を知らされていなかったお客さんたちは芝居を見に来るつもりだったためか、音楽がかかっているのにまったく動いていなくて、ほとんどの人が戸惑っていたのではないかと思います。視線を移せばどこかで見たことのある人たちばかりで、私は後ろの方にいながら始まるのを待っていました。
開始時刻を過ぎた頃、演者である彼がフロア内をのりながら歩いているのを発見、数分後、音楽が止まり、音響がおかしくなったというところから話が始まりました。同じ目線で展開し、そこかしこで科白が発され、ライブ感が高まるような感じもしました。難点としては声を張っていてもマイクをつけているわけではないので聞き取りにくく、流れをつかむのに苦労したところです。本筋の他に小ネタも入れたり、クラブであることをいかして「その日そこで行なわれているイベント」として歌手役の子が歌ったり、お客さんの中にもサクラがいて盛り上げたりして、面白い試みがいくつもありました。面白いなあと思う半面、どこかで見たことがあるなあという気持ちもありました。
現実としてあるかのような話……だったのですが、途中から学生演劇的流れというか、私がちょっと苦手だと思っているような展開に向かっていったため、最後は投げちゃったのかなというのが率直な感想です。何かから逃げることや、変わってしまった人物や、登場人物の誰かが死んで終わるというところは、せっかくここまでの設定があるのだからもったいなく感じました。
一つ目のものが終わってまだ話が続いているのかと思いきや、ぶちぎり状態で次の話が始まりました。こちらも設定は良くある感じだったのですが、非常にばかばかしく、そのばかばかしさがまたにやけてしまうぐらいのものだったので、ゆるゆるではあったもののちょっと気に入ってしまいました。話の筋より何よりも、単にクラブで騎馬合戦をやりたかったんじゃないのか、お客さん全員を地面に伏せさせた状況を見たかっただけなんじゃないのか、と、騎馬戦を見て喜んでしまった私はそれをやろうとノリノリで話している人の姿を想像してしまいました。
予定よりもかなり早めに終わってしまったらしく、一つ目の芝居をキャストを変えてゆるーくダイジェスト的にやってみたり、告知がある人はどうぞとお客さんに告知タイムを設けたり、それからも何かあったのかもしれませんが私は途中で出てきてしまったのでわかりません。友達も微妙な表情をしていて、少し安心したのも事実です。
サプライズ的演出もあり、彼等が普段一緒に行っている劇団のメンバーも出演してその中のネタも使われていたり、何よりクラブ全体を舞台にして、すべての人々がその芝居の世界の住人となっているところが面白くもありました。VJもあってスクリーンには結構凝った映像がうつされていたのですが、最後のスタッフロールには演者の他にエキストラとしてお客さんの名前も入っていて、ちょっとしたことなのにうれしくなりました。
やはりもったいないのは一本目の芝居のラスト、でした。赤字覚悟でバイトを一生懸命して、一つのことをなしきった彼等の行動力と、一回目では演者も二人でスタッフも少数だったのが今回では大勢のキャストとスタッフを集めていて、その顔の広さを人望の厚さには驚かされました。やりたいことが明確にわかっていて、今でしかできないこともわかっていて、過去にしてきたことをいかしてこれからに繋げていく姿を見て、彼等には頑張ってもらいたいとひそやかに応援しています。今回のは特別公演という、ちょっと変わった形のもので、今度の劇団のライブは春にやるみたいです。劇団と言ってもお笑いなので、もし興味を持ちましたら是非ご連絡を。