友人と初詣+厄払い。前回の厄年の時は知っていてもお祓いをしようとも思わなかったのにこの歳となると前厄でさえ気になりはじめてしまいました。そこそこ有名なところなので大混雑かと思いきや申込後さくさく進んで、白い半纏の肩がないようなものを着てお祓いがはじまりました。
自分の名前を呼んでもらってイントネーションになるほどとうなずいたり、お祓いを受ける側が何をするのかというアナウンスをするお姉さんがとても手慣れた様子だなあと感心したり、ほんの少しのお神酒がおいしかったり、もらったお札の自分の名前が上手なのかよくわからなかったり、なかなか貴重な体験でした。
すぐにお祓いをしてもらえると思っていなかったので、その後に改めてお参り。並びながら老若男女関係なく携帯やデジカメで神社をぱしゃぱしゃ撮っていて、私はその画面ばかり見ていたような気がします。ちなみにおみくじは末吉でした。願いごとは叶うけれど失せものは見つからず。その意味するところを考えるべきではない、と判断して一瞬浮かんだ可能性を打ち消しました。

年末年始の録画番組を消化して満足して、後はもう一つ、その日のものを深夜に改めて再生。NHK教育の「Q〜わたしの思考探究〜」*1という番組でした。
予告編から気になっていたのは、哲学などにあまり明るくない私でもわかりやすく噛み砕いた文章で日常に引き寄せて提示させてくれる、鷲田清一さんが出演されるからでした。鷲田さんが答える方で、訊ねる方はモデルの冨永愛さん。
本当の自分とは何か、というような、冨永さんだけでなく誰しもが抱く悩みにおだやかな表情のまま話を聞く鷲田さんが、子どもの対応についてある質問をしました。うろ覚えなのでちょっと内容は違っているかもしれません。
「小学生の息子が学校から飛び出してくる。母親は手を広げて抱きしめようとするが、彼は離れて立ったままである。『お前は母さんが好きではないの?』と聞くと息子は『うん』と答えた。この後母親のとった対応は三種類。どれが妥当と考えるか。」
1 「そう。いいわ。お家に帰りましょう」と言って家に帰る
2 母親は息子を怒鳴りつけて「生意気言うんじゃないよ!」と言う
3 「だけどお前が母さんのこと好きだってわかっているわ」と言い息子を抱きしめる 
冨永さんは一番目か二番目、あるいは「もう帰ってくるな」と言ってしまうと答えていましたが、鷲田さんが学生にアンケートを取ったら三番目の答えが一番多かった、とのことでした。私は三番目のように大人にはなれず一番が精一杯かな、と思っていたら、鷲田さんの解説は意外なものでした。
三番目は一見優しそうには見えるけれど、それは子どもを他人として見ていないということ。自分の思う答えと違っていたら矯正しようとするというのは自分のわがままだし、子どもとはいえ自分とは違う存在だということを認めなければならない。母親としてつらいかもしれないけれどその方が子どものためにもなる。だから他人が拒絶されるとどういう対応を取るのか、傷ついたり怒ったりするということを学ぶから二番目が一番良い(少し私の曲解が入っています)……それを聞きながら誰もいないのに「ああー」と声を出してしまいました。
他にも本来の自分なんて探してもどこにもないというようなたとえをたまねぎで提示していたのですが、そこで思い出したのは古厩智之監督の『まぶだち』という作品の中で、いたずらばかりしていた中学生の男の子が書いた「僕はたまねぎ」という作文でした。むいてもむいても芯はない。まさかそこにリンクするとも思っていなかったので、映画もまた見たくなってしまいました。

毎回二人の組み合わせは違うようですが、今後のラインナップを見てみたら、三回目はピースの又吉さんと言語学者町田健さんとのこと。土曜の深夜にぼんやりと思索するにはちょうど良い番組なので、録画リストには入れておきます。

さむければさむいほどうれしくなるのがわたしです。笑う月を見上げてはにんまりし、オリオン座と北斗七星を見つけてはにっこり。駐車場だった家の向かい側に家が建つことになって今は工事中ですが、きっとここから見る景色も狭くなってしまうのだろうと思いながら白い息を吐きました。

ロスト アンド ファウンド

ロスト アンド ファウンド

ここ数日聞いているのはLOST IN TIMEの「ロスト アンド ファウンド」です。ロストに関してはある時期を境にちょっと距離を置いておかなければならない、と感じてしまうほどズレがあったのですが、海北さんの弾き語りやこの前の24時間ustを見て、彼らの魅力がちょうど良い具合にブレンドされているのを知ってまたライブで見たくなりました。
一時期は十代ではなく二十代のもがき、さけび、それを吐露していて、相手との関係性も無視しているような感覚さえいだいてしまったのですが、それを乗り越えて相手のことを見る視線を感じるようになりました。抱えるものがあってもおだやかな表情が年を経たからこそ色っぽくも見えて、何度も聞きたくなるようなアルバム。彼らと同年代ということもあり、この冬に噛み締めたいです。